BPO_20周年記念誌
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061BPOの20年 そして放送のこれから放送そしてBPO 14のメッセージ至っている。メディアに対する国民の信頼度はG7(主要七カ国)で最低である。一九八七年以降、FDや同様のメディア規制を復活させようという議論や提案が民主党の側から時折なされているものの、全て頓とん挫ざしている。ケーブルチャンネルどころか、今日では、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が社会の情報インフラとなっており、もはやFDの適用は非現実的との見方が優勢だ。二〇〇九年に就任した民主党のバラク・オバマ大統領も、FD復活よりも、むしろインターネットにおける「ネットワーク中立性」の在り方やメディアの所有数制限などに関心を抱いていた。日本への含意昨今の米国の状況と比べると、日本はよりバランスの取れた、偏向の少ないメディア環境にあると私には思える。米国と比べると、大手放送局やケーブルチャンネルの数が圧倒的に少ないこともあり、コンテンツや編集上の決定に対する統制が一元化され、「放送の不偏不党」がより実現しやすいとも言える。確かに「左」か「右」かの違いはあるが、米国と比べれば、「コーク」か「ペプシ」か程度の違いに過ぎない。コロナ禍にあっても、日本の主要メディアでは「三密回避」「マスク着用」「ワクチン接種奨励」などの立場は共有されていた。日本では「当然」と思われるかもしれないが、米国では必ずしも「当然」ではない。ごく基本的な防疫体制をめぐっても党派対立の火種となったことは記憶に新しい。もっとも、米国と比べると、競争が少なく、かつ対立を嫌う風土ゆえ、一種の「馴なれ合い」が生じてしまうリスクもある。旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題が大きく報じられるようになったきっか

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