BPO_20周年記念誌
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051BPOの20年 そして放送のこれから放送そしてBPO 14のメッセージが欠けていた」として、改善のための対策を講じることが局に求められた(注1)。放送局がこうした事態を繰り返さないために番組制作時に十分配慮すべきなのは言うまでもないし、出演者の心のケアも必要だろう。しかしSNS上での一方的な批判→拡散→炎上という図式が収まらない限り、同様のことは常に起こりうる。そしてこの図式への恐怖は、当然のことながら制作現場を萎縮させる。ドラマの主人公やバラエティーの出演者たちに常に「正しい」ことが求められるとしたら、それはなんと窮屈なことだろう。私たちはみな失敗もするし間違えもする。そして世の中は理不尽なことで溢れていて、社会に対する鏡とも言えるテレビがそこから目を背けることは、本来できないはずなのだ。世間一般の「正しさ」への追従とは異なる番組の「倫理」とは何かを、今根底から問い直す必要があるのではないだろうか。そしてそのことに対して、BPOは積極的に見解を示して世論形成にコミットできないものだろうか。それは間違いなく制作現場や出演者を守ることに繋つながるはずである。BPOは基本的に問題対応型の組織であり、『TERRACE HOUSE』の事案のような問題が起き申立てがあれば、「人権侵害があったかどうか」、「放送倫理上の問題があったかどうか」を審理する。それはBPOのとても重要な使命なのだが、はたして事後的に対応するだけで、「放送倫理を高め、放送番組の質を向上させ」(放送倫理検証委員会)、「放送による人権侵害の被害を救済」(放送人権委員会)することは可能なのだろうか。前述のように番組の「倫理」とは何かを明確にし、そこから外れる番組出演者やスタッフへの誹謗中傷や名誉毀損等に対して断固とした態度をとり、被害者をサポートするような仕組みが、第三者機関である

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