BPO_20周年記念誌
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039BPOの20年 そして放送のこれからスペシャルインタビューだから。放送、要するに地上波の、今、流れて消えていくものが一番好きなんですよ。事務局 残らずに消えていくものが好きなんですか。是枝 そこが本当は最初のアイデンティティーだと思うんですよ。久世光彦さんともよく言っていた。残らない潔さっていう、そこに美学を感じる人たちがやっぱり放送を選んだんですよ、最初は。そうは言いながら、そう言ってた人たちが、自分の作品をフィルムで残しているっていう矛盾がすごく好きです。村木とかも、消えていくものが美しいって言いながら、放送されたものをフィルムで自分でとって保存しているっていうのが、いいなと思うんです。あんまり理屈じゃないところが。僕は、出会ってしまった衝撃みたいなものが、アイデンティティーとしてある最後の世代かもしれない。佐々木昭一郎(*5)をオンエアで見たときのショックというのは、図らずも見てしまったものが、とんでもない何だかわからないものとしてあった。見終わったときに、今、自分が見たものはいったい何だかわからないけど、とてつもなく面白くて、ほかの放送されているドラマとは、全く違う何かが湛たたえられていたっていう、それはやっぱりすごい経験だったんですよ。そこがやっぱり映画ではないものなんです。映画は選んで、チケット買って、これを観に行くのだといって、観に行くしかない。佐々木さんとは対談もさせていただいたりしましたけど、本当はそこが僕の原点ですよ。何の話でしたっけ? 事務局 放送と配信の話です。是枝 作り手側からすると、僕は制作会社の人間なので、配信ができて発表の場所が増えた。僕が

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