BPO_20周年記念誌
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032なぜ放送法を知るべきなのか事務局 今のキーワードは「実験」ということになりますか。是枝 うーん。放送って何なんだっていうことを、もう一回問い直すチャンスだと思いますよ。ピンチだから。新興のメディアが出てきて、それまで自分たちのアイデンティティーだと思っていたものが揺らいだときに、もう一度その中で再興するのか、滅んでいくのかっていうのが問われるんじゃないですか。今は間違っていると思います。ネットにあふれているいろいろな声をボードに書いて、フリップにして、みんなでああだこうだ言っているのは、むしろネットを後追いしているだけだから、あれを始めたらアウトだと僕は思います。あれをやっていると、放送が馬鹿にされるだけだと思いますけどね。事務局 人材をどう育てていくのかっていうことも放送の課題だと思います。是枝 自分のことを棚に上げざるを得ないんですけど、僕は大学で映像のことを専門に学んでいません。映画館に通っていただけで、映像系の学部は出ていません。何かそれで論文を書いたわけでもないのに、いきなり現場に放り込まれて、あとはとにかく現場、現場で。考える時間がない中、見様見真似でやるしかないじゃないですか。そうすると、たとえば放送法のことについて、制作会社のADはわが事としては全く考えてないんです。考えないまま30代、40代までいきますよね。それがやっぱり一番危険だと思います。放送のあるべき形というものを学ぶ機会がないまま、ものを作ってるっていう状況だから。海外からすると、メディアに関わる人間として考えられない

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