BPO_20周年記念誌
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026ビではないっていう考え方ももちろんあると思うから。ただ、何を面白がっているのかが分かりにくくなったのは間違いない。事務局 作家主義って「陥る」ものですか。是枝 陥るものですね(笑)。なんとかワールドって言われ始めたら、危険だなと思いますね。事務局 特に外国では「是枝さんの世界」って言われているのではないでしょうか。是枝 そうですね。それが出てくると安心するんだと思うんですよ、お客さんは。そういうショットだったり、そういう構造だったりが、シグネチャーって言われる。ところが演出家がそこに安住していると、自分の心が動かない。それが要らないとはいいませんけど、いつまでもそこに留まっていると、たぶん堕落が始まるんで(笑)。事務局 是枝さんは外国では「小津安二郎の孫」といわれているそうですが、そう言われたら、たいていのディレクターは少なくとも一瞬は嬉しいと思うでしょう。是枝さんが今、目指しているのはどういう方向なんでしょうか。是枝 目指しているもの。うーん。世界基準の働く環境事務局 なぜそんなことをお聞きするかっていうと、是枝さんはアシスタントディレクター(AD)を経験され、ドキュメンタリーに行って、そして今、フィクションで大変評価されている。是枝 作りたいと思っているものが、もう、たぶん手に余っちゃっているので。全部それやるのは無理だなっていうぐらい、作りたいものがあるから、目の前にあるものを何とか一つずつ作るというのがまず目標としてあります。もう一つの目標は、日本の映画の働く環境をどういうふうに世界基準に持っていけるかっていう取り組み。この二

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