BPO_20周年記念誌
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024と思うんですよ。僕はテレビマンユニオン出身なので、放送とは何なのか、放送のオリジナリティーは何か、映画や新聞と何が違うのかっていうようなことを突き詰めて考えたうえで入った。というとちょっと嘘になるけれど、入ってからはやはりそういう思考を持たないと当時は馬鹿にされた。「お前はテレビをなんだと思っているんだ」というのは常に問われました。もうそういう時代ではないっていうのは明らかですよね。僕は萩元・村木・今野の共著『お前はただの現在にすぎない テレビになにが可能か』(*1)という本を読んで入った最後の世代です。今は言わないと読んでくれない。僕がテレビマンユニオンの新人募集の選考委員長をやったのが1997年で、そのときに受けに来てる子たちの中で、テレビマンユニオンがどういう成り立ちをしているのかとか、『お前はただの現在にすぎない……』を読んでいるって子は、ほぼいなかったので、それをまず読ませるところから入社試験を始めたんです。今はメディアの状況が変わってしまいましたから、メディア論みたいなことを言い出すことすら難しいんじゃないですかね。一般的、世間的にはテレビがオールドメディアになってしまったから。ある種の権威になってしまったし。近代ジャーナリズムっていうものが標ひょう榜ぼうした客観、中立、公平っていうことと、テレビというものがどう離れるのかっていうっていうことを村木は考えていた。放送されるものが、芸術っていうものからどう離れられるかという、映画における作家主義みたいなものと違うものをどう目指すのかみたいなことが村木の本には熱く語られていた。

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