BPO_20周年記念誌
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202います。みんなが同じ方向を向いちゃっているので。テレビってそういうことが時々起きるんですよね。そういうことが起きたときに違う論点・違う見方を提示するということは、勇気が要るし大事なことだと思います。池上 日本全体の論調が一色になって、みんなでバッシングしているときに「そうじゃない」という意見があっていいということは、大事な視点ですね。佐野さんの『エルピス』というドラマですが、どうしてこういう番組を作ろうと思ったんですか。佐野 冤えん罪ざいというのをたまたま知って、それを作家さんにも共有して、こんなことがあるんだねっていうその衝撃を、物語としてどう伝えてゆこうかとシミュレーションするなかで、放送局を舞台にしたドラマに行き着きました。池上 最初は週刊誌の編集部を舞台に考えたそうですね。佐野 ドラマでは、主人公がいる舞台はキラキラしたものとして描かなきゃいけないという思い込みもあって、一方で自分たちが働いている放送局のことを楽しいものとして描くって、少し抵抗がありました。それで一旦週刊誌に舞台を変えてみようとしたのですが、週刊誌の編集部だと全10話を続けるのに絵的に難しそうで。テレビ局を舞台にしたほうが画面でわかりやすいし、自分がよく知っている場所なのでネタが豊富にあって面白くなるんじゃないかと。批判的精神を持って描くんだみたいなことは全く考えずに、こっちのほうが面白そうだからと始めて、社内の大勢の人を取材したのですが、話を聞いているとネタがどうしても自己批判的なほうに向かっていかざるを得なかったということがあ

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