BPO_20周年記念誌
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184通知・公表しております(「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」に関する委員会決定)。委員会で重視したのはリアリティー番組の特殊性というところで、映画やドラマなどフィクションの場合は、出演者が物議を醸かもすような言動をしたとしても「これは演技だ」と視聴者も理解しているわけですから、出演者が誹謗中傷を受けるということにはならないだろう、ということです。これに対してリアリティー番組は、まさに〝素〟の自分が番組に出てしまうので物議を醸す、反発を呼ぶような言動をした場合には、直接本人が攻撃される、本人に非常に負担がかかる、そういう構造があるということを強調しました。出演者の身体的・精神的な健康状態について放送局が配慮すべきである。これがまさに放送倫理として求められる、としたわけです。制作者サイドは、炎上したシーンが配信される前から木村花さんが誹謗中傷に苦しんでいた、ということを把握できていませんでした。問題となったシーンが配信・放送された後には、一定のケアをしたわけですが、結果的に十分ではなかったことになります。民放連の放送基準には直接書かれてはいませんが、出演者の身体的・精神的な健康状態に配慮することは、放送局に求められていることの一つだと思います。『テラスハウス』事案では、基本的には「SNSでいろいろあったとしてもほとぼりが冷めるのを待つ」というスタンスで臨んでいたという説明でした。そうではなくて、番組に対するSNSの反応をきちんとモニターしておいて、必要に応じて〝プロアクティブ(能動的)に〟対応していく、ということが求められていると思います。

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