BPO_20周年記念誌
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011BPOの20年 そして放送のこれから巻頭対談放送は社会の多様性にどう向き合うか大日向 もう一つご意見を伺いたいのですが、今の社会は、構造的な変化と共に多様性ということがキーワードになっています。その多様性に対して放送界はどのように着地すべきかということです。多様性を認めることは言うまでもなく大切ですが、一方で自分の大事にしてきたものを捨てなくてはならないこともあると思います。近年、グローバル化の進展と共に、多様性の尊重がよく言われるのですが、本当にそれを受け入れるとなると、辛いなと思うこともあります。濱田 おっしゃるように多様性とは、とても難しい言葉です。最近、一般企業の経営者と話していても、多様性が大事だと言葉の上ではわかっています。そうした話の時に、私は、組織の中で多様性を生かすには、引き出す力、受け止める力、議論する力、まとめる力、信頼を得る力、実行する力、責任を負う力が必要だと言っています。放送でも同じだと思います。今まで気にしていなかった事柄や視点を拾い上げていくことは、多様性の時代にはとても大切になります。それを番組制作に生かすには、これまで以上の力量が求められますが、それをやり抜くことが、多様性の時代に放送のもつ公共性を実現することにつながります。視聴者・聴取者が共有できる、不愉快だと思っても理解できる、そこから何か思いがけないものの見方や生き方もあるというヒントを得る機会を作っていくことが、放送の役割だと思います。それによって社会がより豊かな方向へと変化し、放送の役割に対する期待も高まってくるはずです。

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