BPO_20周年記念誌
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158(1) 青少年の視聴者への影響を考える青少年委員会では、以前から複数回にわたってバラエティー番組における「性描写」や「暴力表現」に対して、見解を発出してきました(「バラエティー系番組に対する見解」2000年11月、 「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」2007年10月)。こうした見解の発出にもかかわらず、特にバラエティー番組において、出演者に罰ゲームなどの名目で肉体的な痛みを経験させ、それを他の出演者が笑うという番組が続き、視聴者から「視聴した青少年が真似をする」「いじめの助長につながる」などの意見が多数寄せられてきていました。こうした番組は、あらかじめリアリティーショーとして「作り込まれた」ものであるという見方もできますが、精緻化された演出は大人でさえリアルとしか見えないものもあり、年少者にはそれをリアルと受け取ってもおかしくないものになっています。こうした「痛みを伴うことを笑いの対象とする」シーンは、いじめ行動に繋がる可能性があるだけでなく、「形成途上の人間観・価値観の根底を侵食する可能性がある」(2007年10月「見解」)ことが懸念されます。近年では脳科学の発達により、人の共感性は他人が苦痛から解放される過程を見聞きすることによって、幼児期から獲得されること、またその過程にミラーニューロン系という脳の回路が関与することが明らかになっています。他人が痛みを感じると、それを見た子どもの脳内のミラーニューロン系が活性化し、本人も痛みを感じているのと同じ神経回路が活性化されます。その時に痛みを感じている他人が別の他人から慰撫されているシーンの視聴によって、子ども本人のミラーニューロン系の活動が収まり、人が人を慰撫することを見る本人が「苦痛」から解放され同時に共感性が獲得されていくという仕組みです。

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