BPO_20周年記念誌
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154摘がある(宍戸常寿「BPOの意義と課題」日本民間放送連盟・研究所(編)『ソーシャル化と放送メディア』(学文社、2016年)119頁)。確かに、放送人権委員会での手続を裁判外紛争処理手続(ADR)の一種と見れば、裁判よりも簡易迅速な手続で紛争解決を行うことが重視され、現在のような審理期間が適切と言えるか、決定件数が十分と言えるかには疑問の余地があるかもしれない。他方で、放送人権委員会(や放送倫理検証委員会)の審理対象となれば、一定の社会的注目が集まり、また、毎回の議事概要や決定の記者発表を通じて審理や決定内容も広く公開されるため、決定が単に当事者間の紛争解決を超えた「重み」をもつことも否定できない。本稿で見たような放送界全体に向けた問題提起も、こうした「重み」があればこそであろう。「紛争解決機能をより強く打ち出すかどうか」の議論に当たっては、こうした側面を考慮する必要があるように思われる。最後に、「BPOは、放送を巡る不祥事を受けて、視聴者からの批判や政治・行政が規制に動き出す中で、それに否応なく対応するために、放送界が受動的につくった組織である」「BPOの組織というものは、最初から現在のような組織として設計されたものではなく、不祥事など放送をめぐる問題が表面化した際の対応として、家を改築、増築するように組織の改変や強化が行われてきた」(塩田幸司「放送の自由・自律とBPOの役割 放送番組の自主規制活動の意義と課題」NHK放送文化研究所年報63号(2019年)202頁)という指摘を挙げておきたい。

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