BPO_20周年記念誌
160/280

152放送人権委員会の結論は、問題があるとまでは言えないというものであったが、これは、前述のような事実認定の限界や、本件の個別事案の特殊性を踏まえたものであり、委員会が本件のような番組を積極的に容認したものでは決してない。むしろ、本決定の核心は、次のような要望・付言にある(決定概要より引用)。フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、男性中心の職場におかれた女性の立場というジェンダーの視点に照らし、本件において申立人は圧倒的に弱い立場にあった。しかし、被申立人のあいテレビは、申立人が構造的に弱い立場にあるという視点を欠いていた。あいテレビに対しては、降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できる環境や職場でのジェンダーバランスなどの体制を整備したうえで、日ごろから出演者の身体的・精神的な健康状態に気を配り、問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けるよう要望する。ここでの指摘事項は放送業界全体に共通する面があり、放送業界全体が、本事案を自社の環境や仕組みを見直し改善していくための契機とすることを期待する。ここでも、放送界全体の取り組みを求めており、「問題なし」という結論だけを見るのではなく、具体的な事案を踏まえた問題提起を受け止めていただきたいところである。

元のページ  ../index.html#160

このブックを見る