BPO_20周年記念誌
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151BPOの20年 そして放送のこれから放送そしてBPO 14のメッセージ第2に、本決定が、出演者の身体的・精神的な健康状態に放送局が配慮すべきことは、もともと放送倫理の当然の内容をなすものと考えられるとした点である。このような倫理規範は、放送倫理基本綱領にも日本民間放送連盟(以下、民放連)の放送基準にも見当たらない。しかし、放送人権委員会は、これらの文書に、間接的に関係する規定はあることに加え、こうしたことは社会通念上当然のことであり、また、場合によっては法的な義務ともなるとして、そのような判断を行った。こうした判断に対しては放送界から異論も出されたが、放送倫理とは固定的なものではないはずであり、委員会が事案に応じて熟慮の上で動態的な判断を行うことは許されると考える。なお、2023年7月に民放連の放送基準が改正され、「放送内容によっては、SNS等において出演者に対する想定外の誹謗中傷等を誘引することがあり得ることに留意する。また、出演者の精神的な健康状態にも配慮する」という規定が新設された(2024年4月1日施行)。放送人権委員会の放送界全体に向けた問題提起に、民放連が真摯に対応された結果として感謝したい。同様の対応が期待されるものとして、もう一つの「重要判例」に言及したい。3.放送とジェンダー2023年7月18日の「『ローカル深夜番組女性出演者からの申立て』に関する委員会決定」(決定第79号)も、放送界全体に対する問題提起を含んだものである。本件も出演者によって申立てがなされた事案であり、他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって人権侵害を受けたとの主張がなされた。

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