BPO_20周年記念誌
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149BPOの20年 そして放送のこれから放送そしてBPO 14のメッセージいる。すなわち、第1に、申立てがあった場合でも、まずは申立人と放送局との話し合いを促している。審理入りするかどうかを判断するのは、話し合いが相容れない状況になってからである(運営規則5条1項4号)。実際、こうした話し合いによって解決がなされ、申立ての取り下げに至るものも一定数みられる。第2に、こちらは近年の取り組みであるが、2020年4月に運営規則が改正され、5条に2項が追加された。ここで注目すべきは同項の1号である。そこでは、「申立てに係る放送の内容、権利侵害の程度および実質的な被害回復の状況に鑑みて、審理の対象とすることが相当でないと認められる場合」には、形式的には審理入りの要件を充みたしていても、放送局の事後対応によっては、委員会の判断により審理入りしない場合があることを規定している。これは、放送局の自主的・自律的な事後対応を促すものであるといえる。見方を変えれば、放送人権委員会の存在そのものによって、自主的・自律的な解決が促進されているともいえ、委員会への申立ての数(の少なさ)だけをもって委員会の存在意義を評価することはできないということにもなるだろう。2.出演者への人権侵害と新たな放送倫理規範筆者にとって、放送人権委員会のもっとも重要な「判例」の一つは、2021年3月30日の「『リアリティ番組出演者遺族からの申立て』に関する委員会決定」(決定第76号)である。これは、筆者自身が起草委

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