BPO_20周年記念誌
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148見方でも、25年の節目を迎えたということになる。本稿では、筆者の在籍期間を中心に、放送人権委員会が放送界全体に及ぼした影響のいくつかを振り返るとともに、今後の課題等についての筆者の個人的な考えを述べることにしたい。1.自主的・自律的解決の促進と運営規則の改正BPOの認知度は高い。少し古い数字であるが、2019年にBPOが行った調査によれば、BPOの認知率は7割に上るとのことである(もっとも、名称のみ知っているとの回答が4割で、「認知の広がりに比べ、理解は深まっていない」ともされているが)。他方、認知度の高さと比較すれば、放送人権委員会への申立て数は多くはない。趣旨不明のものを除けば、2022年度の申立て数は11件、23年度は本稿執筆時点(2024年1月中旬)で8件である。放送の視聴者数は依然として膨大であり、BPOの認知度が高いことを考えれば、この数字は少ないというのが率直な感想である。その詳細な理由は不明ではあるものの、申立てに至る前に放送局の側で適切な対応を行い、解決している場合があることが考えられる。放送法は、放送制度の原則として、「放送の自律」「放送に携わる者の職責」を掲げている(1条)。BPOは、放送局の自律の一環として放送局自身が設立したものであるが、あくまで独立した第三者委員会である。そこで、個別の苦情に対しても、まずはBPOではなく、個々の放送局が自主的・自律的に解決することが望ましい。放送人権委員会の運営規則やその下での実務にも、こうした考え方が反映されて

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