BPO_20周年記念誌
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142い歴史がある。この経験や知見をもとに、信頼ある活動を積み重ねていくほかは、この疑問に答える道はないといえよう。これまでの放送倫理検証委員会における経験では、意見書の公表に対して放送局が大きく反発したことや、BPOの意見書が出たから番組が作りにくくなったという批判を受けたことはあったが、放送局寄りだという意見が私自身に届いたことはない。聴き取り調査を担当すると実感するのだが、放送の現場で格闘している制作者の実情や気持ちに触れると、寄り添いたい気持ちが芽生えてくる。私自身が何度となく、川端和治元委員長から「少し離れて事案を見なさい」と指摘されたところである。全員が調査にあたるのではなく、担当委員のみが聴き取り調査を行い、他の委員は現場の声から一定の距離を置いて事案の検証をする。委員会の調査・検証の過程で留意している点の一つである。調査を実効的にする工夫一方で、委員会の意見が放送局の現場の実務を全く理解しないものになっていれば、放送局にとって参考にならない見当はずれの指摘になりかねない。だからこそ、放送倫理検証委員会は、聴き取り調査に多大な時間を割き、番組を制作した当時、スタッフはどのようなことを考えていたのかをつぶさに知ることを心掛けてきた。そして、この聴き取り調査において何よりも大事なことは、スタッフが真実を語っているとの信頼の下で、放送局とBPOの調査が成り立っているということだ。人は誰でも自身の失敗を隠したい、責任を免れたい、あるいは放送後の影響を小さくしたいと思うものだ。仮に、実態を過小に見せるために事実を歪曲して語ることが常態化したら、BPOと当該放送局との間の信頼は崩れてしまう。ひい

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