BPO_20周年記念誌
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136た時期にも、「イジメ的なバラエティー」がなくならないことが委員会で議論になったことがあった。筆者が委員として活動したのは2年余りと短かったが、少しでも面白い番組を制作しようと躍起になっている現場のスタッフに、青少年保護への配慮について高い倫理を求めることは容易ではなく、委員会が根気強く問題を指摘し、バラエティー番組の制作に携わっている人たちへの働きかけを続けていくしかないと思ったものである。青少年委員会が寄せられた視聴者意見を手がかりに、そこで指摘された問題について議論するのに対し、放送人権委員会は、番組により権利の侵害を受けたとする申立てについて、人権侵害の有無に加えて、放送倫理上の問題の有無を判断する。放送人権委員会は、政府から独立した、裁判外の紛争解決手段のひとつであり、裁判と異なり費用がかからないというメリットがある(申立人が裁判で争っている場合は審理対象外となる)。筆者は2021年4月から放送人権委員会で委員長代行として活動している。それを通じて感じたのは、申立てについて委員会でじっくり審理する様子が、あたかも裁判官の合議のようだということである。例えば、2022年1月18日の決定は、火災で二人の男性が死亡したニュースの続報で、放火殺人の可能性があり、二人の間に「何らかの金銭的なトラブル」があったかのように伝えたニュースについて、人権侵害はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。この申立てでは、被害者の弟が、このニュースにつき兄にも原因の一端があったとの印象を抱かせるもので、兄の尊厳を傷つけたとして放送局に謝罪を求めた。結論を出すにあたって、委員の間で「トラブル」という言葉が、視聴者に対し、両当事者に何らかの非が

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