BPO_20周年記念誌
142/280

134務大臣が放送局の運用停止等を行うことができるとしている電波法76条や放送法174条を、番組編集準則違反を理由に放送局に適用することは表現の自由の観点から許されないと考えられている。なお、これと異なり、番組編集準則を法的規定と捉え、それに違反した場合について電波法76条や放送法174条の放送局への適用を可能としている総務省も、その適用は「極めて慎重に行う必要がある」という姿勢であり(金澤薫監修、放送法制研究会編著『放送法逐条解説〔新版〕』(情報通信振興会、2020年)45頁)、これまで一度も番組編集準則違反を理由に電波法76条や放送法174条が適用されたことはない。ただし、総務省は、番組編集準則違反を理由に放送局に厳重注意や勧告などの行政指導を行うことがある。総務省は、行政指導について、電波法76条や放送法174条に基づく総務大臣による処分の前段階の事前措置として行うことができると考えている。学説には異論もあるが、たとえ総務省のような前提に立ったとしても、これまで番組編集準則違反を理由に行われた行政指導については、いかなる基準で行われているのか謎というほかなく、究明しなければならない多くの問題があると指摘されている(三宅弘・小町谷育子『BPOと放送の自由』(日本評論社、2016年)259頁)。総務省の行政指導については、BPOも、2004年、当時の三つの委員会の委員長名の「声明」で、「放送の自律や放送界の第三者機関に対する信頼を危うくするおそれが極めて強い」と批判したことがある。なぜなら、当時、BPOの委員会が名誉毀損を認定し、放送局に勧告した事案で、総務省が重ねて厳重注意を行ったり(放送局に対する二重の制裁)、二つの放送局の番組についてそれぞれ政治的公平に反する番組があったとして厳重注意し、再発防止策を要請したからである。声明は、BPOの活動が成功するか

元のページ  ../index.html#142

このブックを見る