BPO_20周年記念誌
140/280

132法とは異なって、「放送の自律」を重視することで放送による表現の自由の確保を目指しているため、番組に厳しい内容規制を課さない代わりに、放送局に高い倫理水準を求めているという事情がある。ここで日本の放送法制を他国と比べてみると、いくつかの顕著な特徴がある。その最たるものが、独立性を保障された合議制の行政機関ではなく、総務大臣が放送行政を担っていることである。例えば、アメリカでは連邦通信委員会(FCC)が放送行政を担っている。EUの放送法にあたる視聴覚メディアサービス指令は、加盟国の規制機関に制度上の独立性が確保されていることを前提として、規制手法として共同規制や自主規制の活用を推奨している。東アジアをみても、2006年、台湾に国家通信放送委員会(NCC)が、2008年、韓国に韓国放送通信委員会(KCC)が設立されている。日本でも1950年に電波監理委員会が設立されたが、わずか2年後に廃止され、その後は大臣が放送行政を担ってきた。2009年、民主党政権は総務省に有識者会議を設置し、放送への公権力の恣意的介入を阻止するため、日本独自の「言論の砦とりで」としての監視機関の設置に意欲を示したが、制度改革は実現しなかった。日本の放送法制の二つめの特徴といえるのが、1959年の放送法改正で採用された、放送局に自主規制を促す仕組みである。1950年代後半、テレビが各家庭に急速に普及したことに伴って、低俗番組への批判が高まり、放送法制が見直された。改正により放送法は、放送局に番組基準の制定と公表義務を課すとともに、番組審議機関(以下では、「番審」)の設置を義務づけた。もともと日本の放送法制は、戦前の言論弾圧の経験への反省もあって、「放送の自律」を重視し、放送番組の適正化についても放送局の自

元のページ  ../index.html#140

このブックを見る