BPO_20周年記念誌
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130く地域に入り込んでいくことで、事業だけでなく、番組で取り上げるテーマや内容にも変化がみられてきているのではないかとも感じている。むしろ、いかに有機的に、事業と番組、そしてその先の配信への展開までつなげて設計していけるかを考えることこそが、他の地域企業にはないローカル局の強みなのではないかと思う。同時に、筆者はローカル局がこうした方向に邁進することについての懸念も抱いている。それは、ローカル局が地域の民主主義の基盤を担う報道機関だからである。関東のある独立局の社長が、労働組合との交渉の中で、「スポンサーでない自治体に取材に行く必要はない」、「(ニュース取材は)NHKに行ってもらえばいい」と発言したとして、2023年12月に解任された。そこまで露骨なケースは珍しいと思うが、地域を元気にするというかけ声のもと、自治体や政財界と〝運命共同体化〟していく中で、ローカル局がどこかで、地域メディアとしての本分を見失いかねない危うさがあるのではないかとも考えている。しかし、こうした葛藤を抱えながら、是々非々で地域に向き合うこの〝二刀流〟の姿こそが、ローカル局の未来像なのではないかと考えている。泥にまみれ汗をかきながら地域の明日を共に考え、きれいごとの権力監視ではない地域報道を担うローカル局の姿に、住民は存在価値を見いだしてくれるのではないか。そして国には、こうしたローカル局のメディア機能を地域に生かし続ける形での放送政策を検討してほしい。5年後、10年後にこの原稿を改めて読み直した時、ローカル局が二刀流経営でたくましく地域に共に存在し続けていることを筆者は期待したい。

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