BPO_20周年記念誌
130/280

122にくいのはローカル局であろう。局が地盤とする放送対象エリアでは、視聴者である住民の少子高齢化は進行し、広告主となる地元企業は経営が厳しいところも少なくない。加えて、キー局のようにネットに展開可能なコンテンツが豊富にあるわけでもなければ、地価の高い一等地で不動産ビジネスを営むことができるわけでもない。また、多くが系列ネットワークという仕組みに組み込まれており、個社の経営判断には限界がある。何より、ローカル局の置局は〝一県4波化政策〟をベースに置いた「基幹放送普及計画」に基づいているため、制度を変更するには大きな政策議論が求められるのである。筆者はNHK放送文化研究所で放送政策や地域メディアについて取材、研究活動を行っており、ローカル局の現場を訪ねる機会も少なくない。こうした〝ままならない〟状況をどのように打開すべきかについても、当事者であるローカル局の人達とよく議論するのだが、どの局の人と話しても似通ったやりとりが増えている感がある。各種データを並べるよりこのやりとりを記載した方が、よりリアリティーのある2023年のローカル局の現在地を示せるのではないかと考え、少し長くなるが以下に再現しておく。1.地域課題が増える中、地域メディアの役割はこれまで以上に重要になっていると感じる。総務省の有識者会議(2021年11月から開催中の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(在り方検)」)でも、有識者から同様の指摘が相次いでいる。2.しかし、コロナ禍後の広告収入の落ち込みは厳しく、今後も放送収入の拡大は期待できない。キー局から系列局へのネットワーク配分金も更に厳しくなるだろう。

元のページ  ../index.html#130

このブックを見る