BPO_20周年記念誌
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120女にとって魅力的な男は、不良で金にだらしなく、女好きな「嘘つき」と公言していた。気がつけば、私たちの日常には様々なところで人工知能が入り込んでいる。ファミリーレストランではタッチパネルでの注文が主流になり、ロボットがいつの間にか現れて、「イラッシャマセ、コチラデス」と料理を運んでくる。こちらは「いただきます」とも「美味しそう」も言えず、ロボットが差し出す料理の皿を手にするだけだ。スマホの液晶画面からオーダーできる店も現れている。役所の受付でも効率化の名のもと、今まで対面でそこにいたはずの人間がどんどん削減されている。郊外の、とある牛丼店で長い列を見かけた。券売機の前で年配の方々が途方に暮れ、右往左往していた。どうやら注文の仕方がわからないらしい。厨房の店員は気づいていない。私はこういう状況こそマイク一本でアナウンサーが中継すべきだと思った。AIに倫理は任せられない。社会的インフラから取り残されざるを得ない方々と向き合い、それぞれの人生、立場を理解し、声をすくいとりながら彼女・彼らと社会と結んでいくのが放送の役割ということなのだろう。衆生済度。人情があり、本当のこともあれば、時には嘘だってつく。そんな日常があってこそ番組は続く。  

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