BPO_20周年記念誌
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113BPOの20年 そして放送のこれから青少年委員会青少年委員会では、他の二つの委員会と同様に、全国各地の放送局に所属する番組制作者らと委員との意見交換会を年に数回、開催しています。ある地方都市での会合では、小学生を対象とするカメラ取材の問題が議論になりました。入学式や卒業式のニュース取材では、学校側に「子どもたちは(顔が特定されないよう)後ろから撮影を」と釘を刺されるといいます。「苦しい撮影の仕方だな」と思いながらも、それに従うという参加者がいる一方、「入学式では喜ぶ子どもの笑顔を撮りたい。そこにニュース価値があると思う」との声が上がりました。放送局の一員であり、小学校の保護者会の役員を経験した参加者によると……「テレビに映ることだけでなく、校内の広報誌に写真が掲載されることさえ拒否する保護者が多くいる。それで学校が(カメラ取材に)より慎重になってしまう」子どもたちを取り巻くメディア環境は、この20年あまりで大きく様変わりし、切り出されたテレビ画像が、SNSなどで容易にネット空間に拡散されます。「わが子が犯罪に巻き込まれてしまうおそれ」という保護者の懸念を杞憂だとは言い切れません。しかし、ある委員は「自主規制の形で放送局側が遠慮するのは、あまりよくない」と指摘します。会合終了後に参加者のひとりは、「何を報道したいのかを学校などに説明し、互いの理解を得て臨みたい。信頼関係をいかに築くかがカギだと感じた」と応じました。取材の対象となる子どもたちや保護者も視聴者です。青少年委員会の目的は「視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての機能」(BPO規約より)を果たすことです。意見交換会は、悩ましく直ちに結論が出せない問題であっても、視聴者からの声を踏まえた委員が放送局の番組制作者らと真摯な対話を重ねることで、「回路の機能」を果たす機会になっています。(調査役 初沢 清和)「入学式では子どもの笑顔を撮りたい」

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