BPO_20周年記念誌
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104見る理由を複数回答で尋ねたところ、「大きな画面のほうが見やすいから」(68%)「家族や友人などと一緒に見たいから」(35%)が上位を占めた。かつてなら「テレビ放送」の魅力として挙げられていた項目である。実際、テレビのネット結線率は複数人同居の世帯で高く、「テレビ放送」の強みだった大画面での視聴、特に食事前後での家族視聴の強みを放送が独占できなくなったことが分かる。おわりに~「これからのテレビ」へ本稿の最後に、2023年1月に都内の大学で行ったワークショップの結果を紹介したい。デジタルネイティブの大学生たちに、これからのテレビに何を期待するかを考えてもらった。学生から出た提言は「テレビはストレスフリーになって」「テレビはもっと謙虚に」と辛口だった。彼らの生活とテレビの編成時間が合っておらず、テレビは「あえて」見なければならないような、ハードルが高いものになっているからだという。さらに他の動画サービスでは当たり前の使い勝手が実現できていないことから、テレビに対するストレスを感じていた。改めてテレビ側の努力で改善できることはまだ残されていると気づかされた。メディア環境が大きく変わる中、テレビの役割が社会の中で相対化すること自体は避けられない。これはかつて新聞やラジオ、映画が辿たどった道をみれば明らかだ。だからといってテレビの役割がなくなったわけではない。コロナ禍の混乱が落ち着いた今こそ、テレビの側が視聴者に近づくためできることを尽くす最後の機会かもしれない。

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