放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

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   ■視聴者からの意見
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■ 番組委員会議事のあらまし

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● 2007年1月(2006年度第9回)

 1月12日に開催した今年度第9回番組委員会(有識者委員が出席)は、「これからのバラエティー番組の可能性」と題して「政治バラエティー番組」を中心に議論した。委員から「総務省の一連の動きに対して、BPOあるいは番組委員会はどうあるべきか」との問題提起があった。また、視聴者意見の概要を報告した。

 概要は「放送番組委員会記録」1月号に掲載。

■番組委員会の審議

◆「政治バラエティー番組」

 天野委員長は「今年はバラエティーという道からテレビという山に登ってみたい。少しでもテレビに建設的な提言をできるような結果を出していきたい」と前置きして、『太田光の私が総理大臣になったら・・・秘書田中』を中心にした政治バラエティー番組について議論した。
 各委員の意見は次の通り。

  • 「大変テレビ的な番組だ。こういうものが出てくる時は、世の中が非常に不安定で、大衆の不満が多い世の中だからこそ人気を得ているということ。危惧するのは、こういうことがガス抜きに終わって現実には何も変わらないままに終わってしまうことだ」

  • 「『ビートたけしのTVタックル』は政局について政治家があれこれ言うバラエティーで、『太田総理』は政策的なことを掲げて思い切ったことをズバッと言う」

  • 「政治問題をバラエティー化していくことにはいろいろなよさがある。専門知識をわかりやすくする翻訳機能。政治記者のフレームを取り払って、ごく素朴な疑問をぶつけていくという機能。それからガス抜きというストレスの解消機能がある。それを認めた上で、一番、テレビ全体の問題として気になるのは、ガス抜きの問題だ」

  • 「物理的な声の大きさで人の意見を抑えてしまうところが下品だ。また、自信を持って言われると、視聴者もその気になることがありがちで、世論誘導にならないためにも、この種の番組はいくつかあった方がよい」

  • 「バラエティーを批評するときは所詮バラエティーとあきらめているところがある。しかし一番ここをきちっと批評していかないと、今、テレビ全体がバラエティー化しているので、大事な問題だと思う」

  • 「『日曜娯楽版』とか『巨泉・前武のゲバゲバ90分!』とか表現というものを通して風刺をする形式のものがあった。しかし、『太田総理』は全くストレートなスタイルを取っている。もしかすると今の時代があまり表現というものを通して風刺をするというものでは届かなくなっているのか」

  • 「扱うテーマがアップ・トゥ・デートでないから、政治の圧力というのをうまく回避している番組だなと思う。そもそも風刺というのはいろいろ圧力をすり抜けながらやるという醍醐味もある」

  • 「最近はテレビだけがはしゃいでいて、現実の社会はむしろびくびくしているというズレを感じる」

  • 「ニュース番組がつまらないから、こういう番組が受けるのだ」

  • 「本格的な報道番組が片方にあって、その見方に刺激を与えていくバラエティーという関係性があるといい」

  • 「戦後の多数決社会の1つは抑圧だろうと思う。1つ何か風潮なり流れなりができたら、それに乗っからないと外される。異論が言えない。だから、本当は何か違うんじゃないかと内心では思っても、それを口に出すことはなかなか勇気が要る。それを、太田が、あの番組が言ってくれている」

  • 「太田のキャラクターだけでなく、入念な準備と計算された発言のタイミング。良くできた番組だ」

  • 「ニュース番組とバラエティーのすごく大きな違いは、生放送でやっているか、いないかだと思う。生放送がBSやCSに行ってしまい、地上波に残るのはバラエティーだけという状況が本当に生じつつあるのではないか」

  • 「生でやる番組が減っているのは、生放送で問題が起きるといやだというテレビ局の都合で、やっぱり放送の持っている魅力というものの大きな部分は生にあるはず。編集すればするほどつまらなくなり、ある意味じゃテレビの自殺だ」

◆最近の総務省の動きとBPOの役割

 議題とは別に、吉岡委員から次のような問題提起があった。「最近の総務省の動きを見ていると、 NHKに対して命令放送や、受信料の2割引き下げ、芸能・スポーツ部門の切り離しなどの要請、提案。さらには毎日放送のゴルフ中継に厳重注意など、どうも少し総務省の発言が多いのではないか。放送界全体に関与するという動きが強まっているのではないか。こうした動向に対して、総務省が放送局に対して厳重注意などをする権限は法的にどう説明できるのかをキチンと知っておく必要がある。また、政治権力とメディアはどういう関係が望ましいのか。こういう状況の中で「第三者機関」のBPOはどんな立場を取るべきか。こうしたことを曖昧にしたまま既成事実が積み重なっていくと、いったい日本のマスメディアは将来的にどうなってしまうのかということも考えておくべきであろう。
  総務省の動きに対して各局の対応を見ると、従来型の個別対応になっていて、放送界として対応できていないという印象を受ける。各局、あるいは放送界が自律するための問題解決システムというものを放送界全体で作る必要があるのではないか。皆さんの意見を伺いたい」
  これに対して委員からは、次のような意見が出た。

  • 「BPOは表現の自由を守るためにできている。放送倫理や人権侵害で批判されることによって、結局、放送の自由とか表現の自由が害されてしまうことがないように、中立的なBPOが介在して判断して、自分たちで自律的に表現の自由を守って倫理を向上させようというためのもの。だから、表現の自由を守るための意見を述べることは全然問題ないと思う。放送番組委員会はそういう目的のためなら、いかなることをしてもいいと思う」

  • 「最近の総務省の判断というのはすごくスピードが速くなってきて、1か月ぐらいで行政指導が出てしまう。こういう委員会だとなかなか機動的にできないので、指導が出る前に何かこちらのほうでアクションを起こすというのは難しい。だから、問題が出たときに、当該局の人を呼んで、番組がどういう内容だったのかを見て、行政指導が妥当だったかどうかについて私たちが意見を述べるということからまずスタートしてもいいと思う」

  • 「いい放送が維持されるために、さまざまな圧力や何かの問題が起きたときには、それに対してそんなことは困るという意見を出すことは、番組委員会の仕事だろう。だから、総務省に議事録を配るだけではなく、ときどき意見書をつけるとか、そういう形で総務省に何かものを言っていくという態度を取るのはいいかもしれない」

  • 「権力の不当な介入に対しては、声明を出していくというのはとてもいいことだと思う、むしろやらなきゃいけないことだと思う。あとはそれをどういうスタイルでやっていくかだ」

などの意見が出て、次回も引き続き何が出来るか、何をすべきかの議論を続けることになった。

以上