放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

   ■委員会の説明
   旧放送番組委員会 委員紹介
   ■議事のあらまし
   ■視聴者からの意見
   ■「声明」「見解」など

[HOME]


■ 番組委員会議事のあらまし

::バックナンバーはこちらから

● 2006年11月(2006年度第7回)名古屋委員会

 11月2日に名古屋市で開催した今年度第7回番組委員会は、"名古屋コンテンツの元気の秘密"を中心テーマに、有識者委員と名古屋の放送事業者が意見交換した。委員会には10放送局の経営首脳と番組制作責任者らおよそ60人余りが出席。会議は、第1部で天野祐吉委員長が講演したあと、第2部では各社の番組制作責任者と、第3部では経営首脳と委員とが活発な意見交換をおこなった。
概要は「放送番組委員会記録」11月号に掲載。

○第一部 講演「放送のことば」

天野委員長の講演要旨は以下の通り。

 「僕が考える放送産業というのは娯楽産業ではない。あくまでジャーナリズム産業である。世の中の出来事の天気図を作って皆に配る役がジャーナリズム産業の仕事だと思う。ジャーナリズムは見張りの機能と、批評の機能だといわれている。見張りの機能としてのテレビは、新聞に比べると非常に幅が広いし、柔軟なことばを持っている。今のジャーナリズムは話しことばの上に成り立っている。だから放送記者は絶対に原稿を読んではいけないと思っている。放送が放送独自の話しことばの上に立っているジャーナリズムとしての言葉を、どう獲得していくかということが今、非常に切実な大事な課題になっている。現実にそういう良い芽を持った番組をキチンと"良い"と批評して、育てていく、お手伝いしていくのが、僕らに与えられた仕事であると思う。
世の中の様々にあふれているいろんなものの中から、"これが面白いよ"といってみんなの前に指し示してくれる、見落としているものにハッと気付かせてくれる、そういうものが放送の大きな仕事ではないかと思っている」

○第2部「番組制作責任者との意見交換」

 第2部では、各局が制作した「自社のPR番組」のビデオとカセットを視聴したあと、「名古屋コンテンツの"元気の秘密"を探る」というテーマで意見交換をおこなった。

(▽有識者委員、▲各局参加者)

    ▽名古屋局の番組は、賞も多く取るし、元気だが、その原動力は何か?

    ▲東京・大阪についでエリアパワーを持っている名古屋として、全国に発信をしていくのも非常に大きな役割だと思っている。それぞれの局が独自性をもって多様な番組を提供していく。

    ▲名古屋は深夜であれば編成の自由がきくので、それを生かした番組作りが出来る。

    ▽名古屋のバラエティ番組は、全国的なタレントを連れてきて作っても、何故か名古屋らしい番組にしてしまう感覚が素晴らしい。また、大胆な実験性のある番組が多い。

    ▲仕上がりを名古屋っぽくしようと思って作ってはいない。準キーとしての発信性を、どこかに据えて作っていかないと、純粋ローカルだけでは、経営的にも、制作的にもネットワーク的にももったいないし、演出の技術も向上しないということもある。ネット出来ないものは番組販売で多くの人に見てもらい、制作力をアピールしたい思いがある。キー局のように制作費も潤沢ではないので、挑戦的でユニークなものを作っていかないとやっていけない。

    ▲ネット番組制作に対してお金がかかってもきちっとアプローチをして、存在感を示していくことが必要で、その為には結構努力がいる。

    ▲細かな台本・打合わせをやめ"出会いの面白さ""出演者のやりたいことをやらせる"ことで、視聴者との距離が近づいた。

    ▲番販でも売れる番組の特徴は、出演者から"ゆるい"と言われる番組が多く、そうした(決めごとの少ない)番組作りが名古屋らしさの特徴なのかなと、指摘されて思う。

    ▽リスナーとパーソナルな関係のラジオの特性を生かして、社会に役に立つという意識をお持ちか?またラジオドラマの復活の可能性はあるのだろうか?などラジオの未来を伺いたい。

    ▲ラジオドラマは、もし制作費的に許されるのであれば、ラジオの一番生きる道だろうと思っている。また、リスナーの悩みや、聞いてもらいたい気持ちにパーソナリティが応えて元気づけ、リスナーとの絆が生まれていくことが、ラジオの生きる道だと思っている。

    ▲朝から夕方まで、地元出身で自社で育てたパーソナリティを大事にしているが、後継者をどう育てるかが課題。

    ▲ラジオは一人一人の個人に語りかけている。この特性を生かすには、総合編成よりはそれぞれの聴取者にあった番組作りにもっと特化したほうがいいのではないか。

    ▲デジタルオーディオのプレイヤーを持ち歩き、自分の好きなものを好きな時間に、好きなところで聴いているわがままなリスナーにどこまで応えていけるのか。
    局それぞれが、アイデンティティをしっかり持って、本当の意味での選択の余地を与えて、少しでもわがままなリスナーの要求に応えていけるようにしていくということがとても肝心。

    ▽キー局になるってことはどういうことかと言うと、視聴スタイル、ものの考え方とか感じ方とかの面で視聴者を作っていく。そして全体としてキー局になればなるほど批評性、批判性を失っていくということだろうと思うし、ドキュメンタリーを作る力が弱くなっていくと思っている。こういう賑やかに元気に明るくやればやるほど見えなくなる暗い部分を、どう考えているのか。

    ▲我々が悩んでいる部分だ。地上波の民放がお客さんを少しずつ失ってきているのではという心配、危惧がある。同じような番組、同じようなターゲットでしかソフトを出してきていない、作ってきていない、ということがあるのではないかなという気がしている。
    大事なことは、それぞれの局がしっかりターゲットも考えて、独自性を発揮していくということに尽きる。視聴者をもう少し幅広く見る必要があるのではないか。
    ドキュメンタリーでも若い作り手の意欲を大事に育てていきたい。

    ▽地元密着の地元とは一体どこなのか、何のために地元密着の番組を作るのか、ということが今後のテレビのありようにとっては、ますます問題だと思う。全国で同じ番組を見ていることがとても重要視され、地域ごとの文化的多様性がテレビ制作に反映されてこないような気がする。「地元密着」という生活情報主義的なキーワードではなく、価値観の多様性、視点の多様性、文化的多様性というようなキーワードでのローカル番組作りが増えていったら、より可能性があるのではないか。

 最後に天野委員長は、「個々の番組では大変面白いことをやっているのは分かるが、トータルで見ると、ここは視聴率が取れそうだという非常に狭い地域をみんなで寄ってたかって掘っている感じがする。思い切ってもっと違うところを掘るような、思い切りのいい差異化を目指す局が出てくると、全体の土俵が広がるし、見張りの距離も視界も広がっていくのではないか。
そういう差異化を思いっきりよくやらないとみんな同じようになってしまう。一色になってしまうというのが今の日本社会の本当に困ったところで、日本人全体が差異化のない、みんな同じ方向を見て同じことを言う人間になってしまうことを、マスコミは促進しているようなところもあるようにも見えるので、是非是非お願いしたい」と述べて制作責任者との意見交換を終えた。

○第3部 経営首脳との意見交換

 第3部では、自己紹介を兼ねて各局首脳から、「デジタル化など伝送手段がいかに高度化しても、人の心や番組の内容までデジタルになるわけではない。今後、地上波放送が地域において信頼される基幹メディアであり続けるためにどうしていくべきか、常に放送の原点に立ち戻り真剣に聴取者・視聴者の方々と向かい合ってお話を聞いて番組を作っていきたい」「とにかく全国ネットを増やしながら制作力を上げていく」「ラジオでしかできないこと、また聞いて役に立つ番組を放送する」などの考えが示された。
委員長の「一体放送局の社長は自社の番組をどのくらい見聞きしているのか?」の問いに、テレビ局の首脳は「忙しくてなかなか全部は見られないが、自社制作番組の新番組はなるべく見るようにしている」との実態が語られ、ラジオ局では「職場では一日中かかっているのでBGM的に長時間」という人が多かった。見たり、聞いたりしたものに意見を言う人は、半分以上。ただし、やめろと言うことはない、我慢も大事とのこと。

有識者委員▽と、各局首脳▲の意見交換は以下の通り。

    ▽デジタル化は、何が大変で、どうクリアしたのか。

    ▲アナログとデジタルの違いを、視聴者、メーカー、さらには放送局員にわかってもらうのが一番大変。

    ▲売り上げが一銭も上がらないのに、国策だからと投資をし、サイマルでランニングコストがものすごく増える。地方局は赤字になる。

    ▲課題は、残り数%のカバー問題、そして2011年にアナログ放送が完全停波してもらわないと困る。

    ▽デジタル化に備えて過去の番組素材の保存と活かしかたは?

    ▲過去素材の保存と商品化は、なかなか難しい。また放送に耐えられるかという難しい問題を抱えている。

    ▽デジタル化で放送番組が変わっていくのか。

    ▲伝送技術が変わっただけで、全然変わらないと思う。利用形態は変わっていくだろうが。

    ▽利用形態が変わると、視聴者と局の関係が変わるか?

    ▲あまり変わってこないのではないか。ただ、テレビ局が持つサービスが多様化してくるから収入を得てくる面が少し増えてくる面はあるかもしれない。

    ▽米国で新聞の講読率が落ちたという。これは明らかに、インターネットの影響もある。テレビにもインターネットは影響を与えてくるのではないか。

    ▲広告収入面では、ラジオはすでに影響を受けている。逆に、リスナーとの新しいコミュニケーションツールとしてのメリットもある。

    ▲伝送手段の多様化は、いずれ物作りも変えるだろう。デジタル時代を迎えるには心構えを変えないと駄目だ。

    ▽テレビ資産・文化資産としての脚本の保存・管理をお願いしたい。

 最後に委員長が「『タイム』が"ブログは新聞を殺す"、"ブログはテレビを変える"という過激な特集をやった。 インターネットでかなりテレビも影響を受けざるを得ない。そういう意味で大きく変わる時でもあるし、デジタル化という問題も絡んでくる。時代そのものが何か優れたジャーナリズムを必要とするぐらいに荒れ果てた時代だから、是非放送をより良いものにしていただくためにご努力をお願いしたい」と述べて会議を締めくくった。 

以上