放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
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■ 番組委員会議事のあらまし

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● 2005年2月(2004年度第10回)

制作プロダクションと放送局の関係


 2005年2月4日に開催した今年度第10回番組委員会(有識者委員と放送事業者委員が出席)は、“制作プロダクションと放送局の関係”をテーマに、ゲストの重延浩さん(テレビマンユニオン代表取締役会長・CEO)が講演し、続いて意見交換を行いました。
 また、テレビ東京の番組『教えて! ウルトラ実験隊』で、事実と異なる内容を放送した問題について、同局の委員が報告。あわせて、同局が後日放送した訂正・謝罪のVTRを視聴しました。その後、2005年1月にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を担当調査役から報告しました。
 委員会の議事の詳細は『放送番組委員会記録』2月号に掲載しています。同『記録』の購読については、BPO事務局にお問い合わせください。

◆制作プロダクションと放送局の関係

 ゲストの重延さんは、「会社やプロダクション団体の代表としてではなく、一制作者としてお話したい」とした上で、次のように語りました。

○ 現在、全国にさまざまな形のプロダクションが約3,000あると言われている。1970年の独立制作プロダクション誕生以降、35年の歴史を経たが、この35年間はプロダクションの、①創生の時代、②多様化の時代、③自立化の時代の3期に分けられる。今は“自立化”を志向している時代と言えよう。

○ 日本では、放送局が放送と制作を両方行うのが当然と考えられているが、放送事業と制作事業は分かれているのが世界の常識だ。そもそも日本のテレビ局が自ら番組を作るようになったのは、テレビ放送開始時に映画会社などの協力が得られず、自前で制作せざるを得ない背景があったためだ。しかし、70年代の放送局の合理化の一環で制作の合理化も図られ、それが独立制作プロダクション誕生の気運となった。

○ 当初は、著作権はほとんど放送局に帰属し、映画会社を除くプロダクションも、流通市場がなく著作権を持っても意味がなかったため、ほとんど関心を示さなかった。しかし、ATP〔(社)全日本テレビ番組製作社連盟〕が設立され、放送局との契約のあり方について検討し始めたり、プロダクションが多様化してきた頃、ソフトの市場が動き出し、やがて多チャンネル化で急速に広がった。こうした市場の広がりによって著作権論争が続いたが、98年に公取委が出した指針により、放送番組についても『制作費を支払ったからといって著作権譲渡を強要することはできない』と確認された。これにより、著作権の帰属を巡る論争は終わったと考えている。その後も下請法などが整備され、放送局とプロダクションの関係も変化しているが、こうしたメディア環境は日本独自のもので、世界の制作事業に目を向けてほしいと考えている。

○ アメリカでは、70年にFCCが、当時の3大ネットワークが報道番組を除いて番組制作に出資し、その所有権を保有することを禁じた。また、『放送局は、自らが制作していない番組の配給権・所有権を持てない』とする法律を作るなど、放送事業と制作事業を分離し、独立制作会社を保護した。そうしたことにより、ハリウッドを中心とする“スタジオ”と呼ばれる制作プロダクションが新しい産業を作ってきた。さらに、知的財産保護、テレビメディアの拡散等により、番組やチャンネルの多様化が進んだ。

○ フランスでは、CNCという機関が、映画チケット代と放送局の収入の一定割合を基金としてプールし、テレビや映画の企画が通れば制作会社に支給する国策の制度がある。英国では、放送局が制作会社の出資を受け入れ、権利を渡すという契約が、BBCも含めて行われている。また、ITV、BBCとも、一般論として、放送番組の25%は外部制作プロダクションの制作とされているが、今年にも50%に広げる方向だ。また100%外部制作チャンネルを設け、放送の多様化を図っているなど、欧米は日本と大きく異なっている。私は、行政の支援なくして新しい放送の形はできないと考えている。欧米を見れば“放送内容に介入しない放送行政”は間違いなくあるし、それが歴史を変えてきたと、はっきり言える。

○ 日本の制作事業の課題として視聴率の問題があるが、その構造を変えるにはよほどの覚悟が必要だ。ただ、放送に携わっている人たちは“自分たちがこうあるべき”という思いは皆、持っている。それをどう形にするか、局も制作者も意見交換を行いながら、戦いながら作っていると思う。

○ さらに、課題の一つにキャッシュフローの問題がある。欧米では普通、企画成立時・中間時・納品時にそれぞれ30%ずつ、制作費が放送局から制作会社に支払われる。日本は納品1か月後までは支払われず、番組は制作会社の資金繰りで作られる。放送局が制作費を出していると言うには、欧米のやり方が常識ではないか。

○ 未来の課題として、携帯やインターネットを含めると、個性の拡散化ではなく、むしろ同じ方向に向かう危険性がある。そうした中で、放送はどう多様化し得るかという問題がある。100%外部制作によるチャンネルも、多様化という意味では必ずしも捨てた意見ではないと思う。また、制作会社が出資できる制度を整えていきたいという気持ちは強くある。一制作者として、“放送は何を志すか”“何を目的に”“放送の使命とは何か”という問いかけはいつもしておきたい。そして是非、制作する者の意見も参加させてほしい。

▽著作権と編集権、多様な放送文化などを巡り議論
  委員との意見交換では、次のような質疑がありました。
〔委員の意見=▽、重延さんの発言=○〕

▽ プロダクション制作の番組を納品後、テレビ局が番組に手を加えた場合、著作権の侵害になるのか。

○ 放送の責任を果たすための編集権は放送局にあり、放送責任の下で公正な放送をするためには、むしろ必要なことだと思う。BBCの場合は、企画が決まった形と違うかどうか審議があり、当事者間で意見が合わない場合は、放送局の中の第三者が最終決定する。制作プロダクションが納得しない場合はプロダクションのクレジットを外すことができる契約になっている。

▽ 局とプロダクションの不均衡な力関係の中で、著作権を局に譲渡せざるを得ない構造があるのではないか。

○ 基本的には著作権を譲渡しなくていいわけだが、こうした原則にはさまざまな解釈もある。これはビジネスであり、話し合いで解決するしかないと思う。

▽ 欧米でプロダクション制作が保護される背景には、多用な番組提供の重視という考えがあると思う。日本では総務省という行政(国の機関)がダイレクトに規制しているので、多様なプロダクションに一定割合の番組を作らせる法律ができるのか、疑問だ。

○ 現体制では非常に難しいと思うが、BSなどでもう1チャンネル増やすのは、大胆にやれば可能だと思う。多様化のための発言はしておいたほうがよい。

▽ 放送局がプロダクションと上手くやっていく目的は、番組の多様化よりもコスト引き下げではないか。

○ 制作費は大変で、今は人手を減らして機能的にやっていくぎりぎりのノウハウを使い切っていると思う。その限界の中で、最高の番組をどう作るかだ。ただ、現実の番組の傾向は、金のかからないスタジオトーク中心の方向に向かい、それが多様化をなくすことに繋がっている。

▽ 出版界でノンフィクションの良い作品ができないのは、作る過程でお金を出さないからだ。テレビも同じだと思う。この問題について主張はしているのか。

○ 常にしている。現状の中でも上手く作るプロフェッショナリズムが出てきてしまうが、それも限界だ。一番の心配は、優秀な人が来なくなってきたこと。優秀な人が来るような制作環境を作れるようにしてほしい。

▽ プロダクションが二次利用権を持つケースは広がっているのか。

○ 広がっていると思うが、放送が終わっても、配給などの管理に関する“窓口権”を放送局は持ちたがる。これによって死蔵になるケースが多いというプロダクションの意見が多いが、そうならないためには、放送権終了後の1年間で局が何をしたのか報告してもらい、実績がない場合には権利を制作会社に返してもらうのが合理的ではないか。

▽ 今の放送文化は、どこが作っているのか。放送局と制作会社のどちらが主体的にソフトを作っているのか。

○ 番組によって差が大きい。ドラマはプロダクションの100%制作が多いが、情報量が必要な番組が増え、しかも短時間で作るとなると、共同で作る体制が非常に多くなっている。放送局が総合プロデューサー的に全体を見ていく傾向は高まっていると思う。

以上