放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2005年1月(2004年度第9回)

2004年の視聴者意見から/放送を取り巻く法的状況

 2005年1月7日に開催した今年度第9回放送番組委員会(有識者委員のみ出席)では、2004年1月〜12月の1年間にBPOへ寄せられた視聴者意見を分類して事務局が報告した後、意見交換しました。続いて、“放送を取り巻く法的状況”について、弁護士の田中早苗副委員長が基調報告をし、議論しました。また、12月にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を調査役から報告しました。
 委員会の議事の詳細は『放送番組委員会記録』1月号に掲載しています。同『記録』の購読については、BPO事務局にお問い合わせください。

◆ 2004年の視聴者意見について意見交換

 事務局から、2004年の1年間にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要について、以下のように報告しました。
 「1年間の視聴者意見総数8,188件のうち、放送に関する意見は3,541件で、その内訳は、人権関連が約7%、青少年関連が36%、放送番組全般が46%、BPOに関する問い合わせが11%となっている」「視聴者意見のうち、過半数が放送に直接関係のないものであること、また、Eメールで寄せられる意見で時々、同じ内容のものが集中的に来ることがあり、こうした意見を数量的にどう扱ったらよいのかが、BPOとして悩ましい問題だ」「寄せられた意見は事務局で毎日、内容別に分類して、人権関連はBRC担当調査役に、青少年関連は青少年委員会担当調査役に連絡してそれぞれ対応しているが、それ以外の、差別やいじめ、品性、取材・制作のあり方や放送倫理など“番組全般”に関する問題について検討・協議することが、番組委員会の機能とされている」と説明。さらに、年間を通した主な視聴者意見の概要を、報道、ワイドショー、バラエティー、ドラマ、放送の言葉、CMなど内容別に紹介したほか、BPOに対する意見や、放送への規制を求める意見などについても報告しました。

▽規制論やBPO批判にどう対応するか

  意見交換では委員から、「報道記者の姿勢や、言葉の乱れ、文字テロップの間違いなどを含めて、放送局はどういう新人研修をしているのか気になる」「放送の規制を求める意見はいつの時代にもあるが、全体の流れとして増えてきているのか、データとして見ておく必要はある」との意見や、「海外に比べ、日本の放送番組のレベルの低さはどうしたらいいのか」「下劣な番組があってもいいが、一方でハイブロウを売りにしている局があるかというと、ない。チャンネルを変えても局の違いがなくなっており、全部が同じレベルであることのほうがむしろ問題だ」などの意見が出されました。
 また、12月に青少年委員会が公表した「“血液型を扱う番組”に対する要望」に関連して、「現場の価値基準が“みんな好きなら何でもあり”で、企画が野放し状態になっているのでは」「青少年委の要望にもかかわらず、その後、複数局が同様の番組を放送したことに対して、視聴者からBPOの役割を疑問視する声が寄せられている。これに対して、BPOはどう対応していくのか、考えた方がよい」「血液型がいじめにつながってしまうような構造を持つ社会状況のほうが問題ではないか」などの意見もありました。

◆ 放送を取り巻く法的状況について議論

 メディアを巡る法的な環境について、田中副委員長は、「近年、法律や裁判によるメディア規制動向がさらに厳しくなってきている」とし、次のように報告しました。
 「メディア規制の大きな動きが見られるようになったのは1999年頃からだ。個人情報保護法、人権擁護法案、青少年有害社会環境対策基本法案などの法律面だけでなく、2004年には行政からの関与も出てきた。イラクの自衛隊取材を巡って確立した取材ルールは、国民保護法制下で指定(地方)公共機関が立てなければならない業務計画にも悪影響を与えかねない」「また、04年はテレビ2局に対して“政治的公平”等の観点から総務省の行政指導が行われた」。
 「プライバシーを巡る問題で論議を呼んだのは、『週刊文春』の販売差し止めを命じた仮処分決定だ。別の裁判でプライバシー権を“自己情報コントロール権”とする考えを取り入れた判決が出たが、これでは、すべて本人の同意がなければ報道できなくなる可能性がある。さらに、名誉毀損の賠償金額が高騰化し、しかも有名人ほど高額というのも問題だ」。
 「2005年は個人情報保護法が全面施行されるが、これに基づく表現活動に対する規制や刑事罰の発動も考えられる。人権擁護法案の再上程も予定されており、憲法改正の動きも活発になってくる。特に憲法改正の動きを見ると、“権力を縛る憲法”から“国民を縛る憲法”にしようとする考えが出ており、プライバシーと青少年保護を名目に表現の自由を縛る考えが入っているなど、メディアにとっては非常に厳しい状況になってきている」。

▽曖昧なプライバシー概念、ひ弱な表現の自由

 報告を受けての意見交換では、「個人情報とプライバシーには、“私の個人情報は勝手に使わないで”という気持ちと、“他人の個人情報を使って我々は仕事をしている”という両方の面があり、他の権利と概念が少し違う。こうした微妙な領域に、法律はどこまで介入するのだろうか」「プライバシーの概念についてきちんと議論しないまま、裁判所が拡大解釈して侵害を認定しているのが問題だ」「“個人情報の私有化”は、表現や価値の創造を痩せ細らせることに繋がる」などの意見が出されました。
 また、「表現の自由は、今の社会状況の中で非常にひ弱な概念になっており、市民に対して説得力を持ち得ない」「表現の自由が、マスコミの権利だと思われている」との危惧や、「プライバシーの問題は、放送や記事を使ってメディアの上で解決すべき。そういう実績を作らないと、法律の規制がかかってくることになる」といった問題提起のほか、「個人情報を国家に預けておけば安心、との考えが増えているのに驚く」「“国がプライバシーを一括して握ること”の怖さは、誰にも具体的にわからない。それをわかってもらうにはどうするかが、メディアや専門家の役割だ」との指摘がありました。

以上