放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2004年12月(2004年度第8回)

相次ぐ災害〜放送はどう伝えたか

 12月3日に開催した今年度第8回放送番組委員会(有識者委員と放送事業者委員が出席)は、“相次ぐ災害〜放送はどう伝えたか”をテーマに、ゲストの林敬三・新潟放送常務取締役報道制作局長と、羽原順司・NHK新潟放送局放送部長から、集中豪雨被害と中越地震に見舞われた新潟の現地での対応等について、それぞれ報告があった後、意見交換しました。また、10〜11月にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を担当調査役から報告しました。
  委員会の議事の詳細は『放送番組委員会記録』12月号に掲載しています。同『記録』の購読については、BPO事務局にお問い合わせください。

◆ 報告:相次ぐ災害〜放送はどう伝えたか

 ゲストの林さんは概要、次のように報告しました。

 7月の豪雨による水害も今回の地震も、いずれも中越地域で起きた。今回の地震では、40年前の新潟地震の時とは違って放送機能は無事だった。中越地震の特徴として、中山間地での大地震だったこと、山間地で生まれ育ち農業をして一生を過ごすという、まさに“故郷”そのものが崩壊したことのほか、大きな余震が長く続いたこと、新幹線が初めて脱線したこと、死者や火災が少なかったこと、車での避難生活で死者が出たこと、などが挙げられる。
 初動取材では電話が全く通じず、被災地の情報や映像がなかなか入ってこなかった。電話がつながったのは被害が軽微な所だけで、正確な情報の把握に時間がかかった。そうした中で、夜明けからのヘリコプターでの空撮が被害状況を映し出して威力を発揮した。
 系列局の支援も受けて、全社体制で地震災害報道にあたったが、素材の受けや処理の問題などに人手が足りず、苦労した。
 ラジオは立ち上がりが早かったし、電話が回復してくると安否情報や生活情報などが入ってきて、どんどん流せるのが強みだった。さらに取材記者の代わりに営業マンがリポートして活躍した。
 新潟放送ではこれまで、“キッズプロジェクト”として、アナウンサーが新潟市内の保育園などで絵本の読み聞かせをしてきたが、対象を被災地に切り替え、現在までに絵本を1,300冊ほど送りつつある。
 一方で、報道する場所の偏り、メディアスクラムと取材者のモラル、避難所のプライバシーなど、課題もある。大事なことは、私たちが被災者の立場に立って、どこまで継続して報道を続けられるかだと思う。
続いて羽原さんから、次のとおり報告がありました。
 今回の中越地震報道では、7月の水害時の経験を踏まえて、節度を持って取材にあたった。初動時の教訓は“遠くの震源より近くのコンビニ”で、まずはそうした映像を入手して放送を繋いでいくことが必要だ。
 生活情報については、“逆L字”画面を使った字幕で120時間放送した。またラジオでは、初期段階では“呼びかけるように、励ますように”アナウンサーに指示したり、意識的に音楽を流した。生活情報も、時間とともニーズが変わり、今一番の関心事は家の再建問題だ。また、生活情報の後には、応援のメッセージや被災者の生の声をFAXとメールで受けて放送した。
 まもなく地上デジタル放送の時代を迎えるが、その時の災害放送はどうなるのか。情報の出口は増えるが、誰がその情報を入れていくのか、今後の課題になるだろう。水害時の自治体の避難指示の遅れなど問題が残ったので、NHKとして、地震の震度と同じようにオンラインで避難勧告、避難指示情報を入手できないかと提案し、消防庁でも研究に着手したと聞いている。これからも被災者の気持ちに沿った形で放送を続けていきたい。


被災者が積極的に生きる姿も伝えて

  この後、視聴者からBPOに寄せられた災害報道に関する代表的な意見を担当調査役が報告し、意見交換に入りました。主な質疑は次のとおり。
 「地震で停電した場合、ラジオが重要になるが、どのくらい力を入れたのか」との有識者委員の質問に対して、放送事業者委員からは「今回の地震ではラジオのレイティングは跳ね上がった。災害情報をラジオで入手しようという関心が高まっている証拠だと思う」との発言がありました。
 また、「阪神大震災の経験は役立ったのか」「被災地での主体は、被災者たちが自分たちで立ち上がっていく姿であるべきだろう。被災者を“可哀想な人たち”と描く報道一辺倒でいいのだろうか」などの意見のほか、「被害のなかった所も報道する必要がある」「被災者が積極的に生きる姿を伝えるなど、バランス感覚も必要だ」との指摘もありました。
 ゲストからは、「マスコミ批判のメールが飛び交ったが、必ずしも事実でないにしても、取材のモラルは徹底する必要がある」との意見も出されました。
以上