放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

   ■委員会の説明
   委員紹介
   ■議事のあらまし
   ■視聴者からの意見
   ■「声明」「見解」など

[HOME]


■ 番組委員会議事のあらまし

::バックナンバーはこちらから
●2004年10月(2004年度第6回)

地方テレビ局の実情と課題/10月18日に臨時・委員会を開催

 10月1日に開催した放送番組委員会(有識者委員のみ出席)は、“地方テレビ局の実情と課題”をテーマに、鈴木健二・成蹊大学教授をゲストに招いて意見交換しました。また、11月に富山市で開催する委員会に備えて、富山各局の自社制作番組ダイジェスト版を視聴したほか、9月中にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を担当調査役から報告しました。
 委員会の議事の詳細は『放送番組委員会記録』10月号に掲載しています。同『記録』の購読については、BPO事務局にお問い合わせください。

◆講演:「21世紀の地方テレビ局はバラ色か茨の道か」

 鈴木さんは、全国55の地方局を取材してまとめた著書『地方テレビ局は生き残れるか』を書いた理由を、「東京で聞いている話と地方で聞く話は全く違うと感じたから」と前置きした後、概要、次のように講演しました。

地上デジタル放送に移行するための投資額は1局あたり50〜80億円と言われるが、年間数億円しか純益のない地方局にとっては、とてつもない投資になる。しかも、政府もキー局も助けてくれない。
その結果、残された道は二つ。公共性やジャーナリズム性を削ぎ落とし、いわばピンクでもギャンブルでも何でもやるしかないという考えと、合併により何とか生き残ろうという考えしかない。
合併も、地方局が頭に描いているのは、系列内の合併(垂直合併)ではなく、同一地域内の合併(水平合併)だ。なぜなら、基幹局が周辺の系列局とそのまま一緒になったら共倒れするしかないからだ。このような垂直合併が行われた場合、ローカル局は大幅なリストラを求められ、単なる「支局」になるだろう。しかし、現在は認められない地域内の水平合併の場合も、放送局が特定の資本の配下に置かれる寡占化の弊害が懸念され、視聴者にとって見られるチャンネルが減ることになる。また、生き残ったとしても、離島や山間部の僅かな世帯のために中継局を建てるという設備投資(これがデジタル化投資の8割近くになる)は、費用対効果を考えれば不可能であり、“地方の中の地方”が切り捨てられることになろう。
こうして、デジタル化は地方の文化を育てるどころか、僅かに残った地方局の制作能力をも合理化で削ぎ落としてしまう。しかし、地方局の経営者は、そうした事態を前にしても、総務省やキー局にキチンと物が言えない。それは、免許更新問題や、キー局に頼って楽をしてきたツケがあるからだ。
こうして見てみると、デジタル化による地方局の未来は、決してバラ色ではないと思っている。

▽地域文化・放送行政面からの検討が急務

 講演の後、意見交換に入りました。質疑の概要は次のとおり。

(委員の意見=◇、鈴木教授の発言=○)
国の施策としてデジタル化を推進した結果、地方の弱者が切り捨てられていくという状況は、“国家的な問題”として総合的に論じる必要があるのではないか。
地方局の番組制作者が切り捨てられていくことは、地域文化の担い手がますますいなくなることを意味する。日本文化全体の危機でもあろう。
じっくり取材・制作した地方局の自社番組は、必ずしも視聴率は高くない。それなら東京の番組を流したほうがよいと経営者は考えるため、地方局の制作能力は転げ落ちるように落ちているのが現状だ。
公共的エンターテインメントは、もう中央集権的には維持できないことを最近のプロ野球が示しているが、放送も同じ状況になっているのではないか。
地方局でデジタル化に積極的なのは独立U局だ。これまでも、スタッフが一人で何役もやってきたので、不況の中で打たれ強い。
鈴木さんの話は“地方が切り捨てられ、国家的なコントロールシステムが貫徹していく”という将来展望で描かれているように感じたが、マスとしてのテレビは先が見えつつあっても、ローカルメディアとしての可能性は逆に大きな流れとしてあるのではないか。
映像作品を作る市民の力は、むしろ非常に豊かになっている。なぜ地方局がそれを自分たちのソフトとして生かしてゆけないのか。既存の発想では無理なのか。
系列の中で過ごしてきた地方局には、そういう思考力がなくなっているのではないかと感じる。
昔は、テレビが上からパッとやれば、それで“ナショナル”ができてしまったが、今は、下から積み上げてゆく形で何かができてくる時代。そういう時代になってくると、放送行政は破綻してしまうのではないか。
中央集権化を進める最大のツールとして、電波メディアが機能してきた。それをやめて、ローカリズムの発想に変えろと言われてもできないだろう。今のテレビ体制は恐竜みたいなもので、どこかで滅びていくのだと思う。
デジタル化という総務省の施策自体に問題があるのに、免許行政があるため、地方局は大きな声で反対できない。やはり免許行政が独立行政委員会などに移ったほうがいいのではないか。

◆富山各局の番組ダイジェスト版を視聴

  11月の委員会は富山市で開催することから、それに備えて、地元5局から提出された自社制作番組のダイジェスト版を視聴しました。

*   *   *   *   *   *   *   *

◆10月18日に臨時・番組委員会を開催

 これは、BPOの三委員会で審議中の“テレビ局に対する総務省の行政指導”に関するBPOとしての対応について議論するために、臨時に開かれたものです。
 委員会には有識者委員全員が出席し、9月21日開催の「三委員長・理事長 会談」以降、まとめられた声明案を基に検討。活発な議論が繰り広げられました。

以上