放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2004年9月(2004年度第5回)

ラジオを見直そう/有事法制と放送局を巡る動向について

 9月3日に開催した放送番組委員会(有識者委員と放送事業者委員が出席)は、“ラジオを見直そう”をテーマに、放送事業者委員から現状と課題について報告があり、審議しました。
 また、田中早苗・副委員長の提案により、事務局から“有事法制と放送局との関係”について概略を説明し意見交換した後、7〜8月中にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を担当調査役から報告しました。
 委員会の議事の詳細は『放送番組委員会記録』9月号に掲載しています。同『記録』の購読については、BPO事務局にお問い合わせください。

◆“ラジオを見直そう”テーマに協議

 まず、入江清彦・委員(TBS R&C)が、ラジオの現状と課題について、同社の番組『森本毅郎スタンバイ!』の聴取を挟んで、次のように報告しました。

AMラジオのセットインユースは10年前に比べて下がっており、リスナーの高齢化が進んでいる。50歳代以上が大半で、“昔の世代の人”が聞き、若い人がどんどん少なくなる傾向にある。
これは、局同士の競争に明け暮れて、ラジオの媒体価値そのものをアピールする努力を怠っていたからではないか。いい番組さえ作っていれば必ず聞いてくれるという“甘え”があり、リスナー本意の番組づくりへの意識が欠けていたのではないかと反省している。
ラジオ総広告費を英米と比較すると、10年前に比べ英米は年ごとに伸びているが、日本は7割に減少している。その理由は、英米ではラジオ局数が激増していることと、RAB(Radio Advertising Bureau)という第三者機関が古くからあって、ラジオの媒体価値を高める努力をし成果を上げていること、また、専門局が多く、いつでもどこでも自分にフィットする情報や音楽が得られる状況にあることなどが挙げられる。
こうした状況を打開するために、日本でも、放送局や広告主から独立した第三者機関「日本ラジオ広告推進機構[RABJ]」を10月に発足させるべく準備中である。
また、これまでも、民放連でラジオキャンペーン番組を企画したり、在京5社でイベント連動の番組企画を展開して媒体プロモーションを行うほか、難聴対策などラジオ聴取環境の拡大に取り組んでいる。
今後の課題は、聴取ターゲットと番組内容を各局独自の方針で選択しつつ、ラジオ局全体として媒体価値を高めていくことに尽きる。また、リスナー経験を持たない出演者や番組制作者をどう教育するか。さらに、新聞のラジオ欄以外で番組やイベント情報をどう配信するか、ラジオを良好に聞ける環境をどう拡大できるか、携帯電話にAMチューナーも搭載できないかなど、課題は山積している。

 続いて、自局の課題と展望について、NHKの瓜林裕治・ラジオセンター長と、朝日放送の依田正和・東京支社次長が報告(ともに代理出席)。
 瓜林さんは、「高齢者に支持される番組を目指して『ラジオ深夜便』を放送している。社会との交流が少ない高齢者、夜眠れずに孤独感を抱いている人たちは心の癒しをラジオに求めている」「一方、若者にも支持される番組の開発・充実として『ケータイ短歌』を編成している。若い人は自分の思いを誰かに訴えたいという気持ちを強く持っており、短歌をPCや携帯メールでラジオに届け、それを聞いた若者が共感できるところに魅力を感じているようだ」と述べました。
 また、依田さんは、大阪のラジオの特徴を「90%以上が自社制作。徹底した関西弁による“しゃべくり・生・ワイド”」として、「多くのメディアが東京カラーに染まっていく中で、徹底した地域密着と、リスナーとの一体感を大切にすることが、ローカルラジオの生きる道ではないか」と話しました。

▽若者の獲得、海外との放送行政の違いで議論

 続いて、北日本放送の『富山弁のチカラ〜いきそる富山弁・そぼれる富山弁〜』(放送文化基金賞・ラジオ番組賞受賞)と、ラジオ関西の子ども向け番組『王様ラジオキッズ』(ギャラクシー賞・ラジオ部門大賞受賞)の一部を聴取した後、意見交換に入りました。
 有識者委員から出された主な意見は、次のとおり。

放送メディアに関心のある大学生の中には、ラジオの世界を志望する者が多い。しかし、彼らがラジオに感じている“絆感覚・温かさ・結びつきの強さ”を、今の東京のラジオは充たしていない。そうした中で、若者はラジオを聞かないからと、切り捨てていくのか。
英米に比べて日本のラジオは、未だにマスメディア感覚を捨てていない。立脚する発想の基盤が違うし、そもそもラジオ局のあり方、体制が異なる。
マスメディアとしてのラジオは先が見えている。日本のラジオがローカルメディアに変わる可能性、ラジオのあり方に関する政策転換はあるのかないのか、気になる。
全国ネットは、番組でローカルな話ができなくなり、その結果、ラジオをつまらなくさせている。
ラジオの特性は“人の声で伝わる”こと。人の声を必要とする人は増えており、孤独や悩み、不安がパーソナリティーのしゃべりで癒される。
ラジオは非常にパーソナルなメディアであり、番組の作り方も自然で自由。それに比べ、テレビは一方的で窮屈で、ある意味では抑圧的だ。


◆有事法制と放送局を巡る動向について

 事務局から、有事法制下の「指定公共機関制度」の概要などについて説明した後、意見交換しました。
 有識者委員からは、こうした政府の動きについて、「警戒警報や避難の指示等だけの放送義務で済むのかどうか、非常に心配」「そもそも、放送の自主・独立性を無視してわざわざシステムに組み込む必要はないのではないか」などの危惧が表明されました。
以上