放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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   ■議事のあらまし
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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2004年6月 (第3回)

番組の賞揚システムを考える(2)

  6月4日に開催した今年度第3回放送番組委員会(有識者委員と放送事業者委員が出席)は、前月に続いて“番組の賞揚システムを考える”をテーマに、放送事業者委員から各社・各系列の表彰・報奨制度について説明を受けた後、議論しました。また、事務局から、5月20日に民放連「視聴率等のあり方に関する調査研究会」がまとめた報告書の概要、および、5月中にBPOに寄せられた視聴者意見の概要を報告しました。

■番組委員会の審議

 審議では、番組の評価も視聴率だけを基準に行うのでは不十分ではないか、との観点から、「良質の番組をより多くの人に視聴してもらう仕組みをどのようにして作ったらいいか考えていきたい」との木村尚三郎・委員長の発言を受けて、各放送局の表彰制度などについて報告がありました。

▽賞の主催や系列による表彰で制作力アップ

 NHKからは、社内表彰だけでなく、外部のコンクールに積極的に参加し、昨年度は86の国際コンクールにエントリーしたのをはじめ、自らも「日本賞」という世界の教育番組のコンクールを主催するほか、優秀なハイビジョン番組に賞を出すなど、さまざまなコンクールに参画していること、また、コンクールで受賞した番組は原則として再放送していることなどが報告されました。
 民放キー局は、社内で番組や個人を対象にした表彰制度を持っていることは共通していますが、「やはり視聴率の高いもの、外部の賞を取った番組が表彰される傾向にある」との実態が述べられる一方、系列局やグループを対象にした賞を設けているケースも多く、特に系列によるドキュメンタリー番組賞を続けることで制作能力が高まったり、ローカル番組が賞を受けることでネットで放送され、さらにドラマ化されるなどの成果を上げている事例が報告されました。
 しかし、賞を取った良質な番組を再放送して多くの人に見てもらうには、「相当、力を入れて宣伝しないと見てもらえないのが現実。逆に、しっかり宣伝して、ある程度視聴者をひきつけることができた事例もある」という報告もありました。
 一方、ラジオ局の委員からは、「コンクールではどうしても、かなり作り込んだ録音番組が賞を取ることが多く、85%が生番組というラジオの現状からすると、日常の生番組をどう評価してもらえるかが課題」という意見が出されました。

▽日常の番組を“褒める”仕組みが必要

 意見交換では有識者委員から、「日常的な番組の評価システムとして、批判的にみるだけでなく、いいところを見つけるメディアリテラシーを反映させる仕組みができないか」「ベストセラーではなくロングセラーを創出する賞の出し方は考えられないか」「例えば『この時間のニュースを一定期間視聴して、よいところを褒めてください』と頼める人たちを育てられないか」「自社の番組審議会を活用する方法も考えられよう」「出来が悪くても番組の視点がいいという場合、賞をあげてもいいのでは。少し破けていながらも、今動いている世の中が実感できるような、そういう視点からの表彰も大事ではないかと思う」など、普段着の日常番組をどう評価し賞揚するかについての意見が多く出されました。
 これに対して放送事業者委員からは、「日常をウォッチングしながら叱るというのはあるが、“褒める”というのは、なるほどなと思った。テレビは“生”で“日常”だから、そこを切り取って、何かを褒める形でものを言っていくというのは、大変有効だと思う」との発言がありました。

▽視聴率とは異なる“評価システム”模索を

 また、放送事業者委員から、「賞をもらうのと視聴率20%取るのとどっちがいいかと聞けば、20%取れたほうがいいと思う制作者は多い。それは、視聴率が取れれば“次の切符”が確実にもらえるからだ」「よそ行きの番組が評価されても、社内ではあまり歓迎されないのが現状」との報告もありましたが、有識者委員からは、「賞のインパクトを強める必要があり、大きなテレビ・フェスティバルの開催など、賞そのものの権威を高めることが重要」「日本でエミー賞にあたるような賞を作ることを考えてもいいのではないか。客観性もあり、ジャーナリスティックで、それ自体が話題になるし権威もある。そういう賞を出すことで、番組制作者によい刺激を与えられる」などの意見が出されました。
 さらに、「番組の質を評価できる機関を業界として用意するか、第三者的な人たちで構成する組織を作るなどして、視聴率とは違う“もう一つの評価基準”を育てることが、番組をよくする方策ではないか」「学校教育とか生涯教育のシステムの中で、テレビ局が自分たちの番組を評価してもらう仕組みをどのように築いていくかを考えてはどうか」という提案もありました。
 また、受賞作品の再放送などについて、「たとえ視聴率が低くても、賞に値するいい番組はもっと再放送してもらいたい」「シネコンなどと提携して、受賞した番組を上映する仕組みがあってもいい」「よい番組を作れば、いろいろな形で市場展開ができて儲かる、というシステムづくりが必要」などの考えも示されました。
 番組批評については、「新聞・雑誌でもっと積極的に放送批評をしてもらいたい。番組批評の名物コラムをメディアが育てることが肝要」という意見が出されました。しかし同時に、新聞のラテ欄については、「ラジオ欄には番組タイトルを掲載していないケースが多い。ラジオ欄がなくなってしまうのではないかと危惧している」との深刻な声も、有識者・放送事業者双方から聞かれました。

◆7月から有識者委員を2人増員

 事務局から、7月1日付で番組委員会の有識者委員を2人増員することを報告しました。これは、委員会審議をより多角的にするとともに、放送事業者委員と同数の8人にすることで有識者委員の自立性・独立性を高めることを目的とした「BPO規約」改正を受けたものです。
 新たに就任する委員は次の方々です。

○ 上滝 徹也(こうたき・てつや)さん
 日本大学芸術学部教授、放送・テレビ文化史。日本大学芸術学部放送学科卒業。同大学同学部助教授を経て、1988年から現職。放送批評懇談会・常務理事、ギャラクシー賞選奨事業委員長。主な著書に、「テレビ史ハンドブック」「’90年代テレビ作家論①〜⑳」(雑誌「GALAC」に連載)など。

○ 吉岡 忍(よしおか・しのぶ)さん
 ノンフィクション作家。早稲田大学政治経済学部在学中から執筆活動を開始。教育、テクノロジーの現場を歩く一方、アメリカや東南アジアなどの外国取材を続ける。日航機墜落事故を描いた『墜落の夏』で講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に、「『事件』を見にゆく」「日本人ごっこ」「新聞で見た町」「M/世界の、憂鬱な先端」など。

以上