放送倫理・番組向上機構[BPO]


  ■放送
   番組委員会■

放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2004年5月 (第2回)

番組の賞揚システムを考える

 5月7日に開催した今年度第2回放送番組委員会(有識者委員のみ出席)は、ゲストに上滝徹也・日本大学芸術学部教授(放送批評懇談会・常務理事、選奨事業委員長)を招いて、“番組の賞揚システムを考える”をテーマに議論しました。上滝さんは、放送批評懇談会が運営しているギャラクシー賞など、各種番組コンクールの意義や、番組向上のための番組賞揚システムのあり方などについて講演。続いて意見交換に入りました。また、4月中にBPOへ寄せられた視聴者意見の概要を担当調査役から報告しました。

▽選奨システムと放送局の課題

 上滝さんは講演で、昨年、創立40周年を迎えたギャラクシー賞の特徴として“番組の総合性と視聴の日常性に基づく選奨システム”を挙げるとともに、選奨委員についても、「放送局OBなどメディア関係者を中心に構成しているが、最近は世代のバランスや、ドラマや報道に強い人など、志向のバランスもとるようにしている」と述べました。さらに、ギャラクシー賞選奨の今後の課題として、「これまでは、日常の生活心理の文脈の中で番組を批評するというメディア観を根拠にしてきたが、今後、録画視聴が主流になった場合、番組の普遍性や専門性が選奨に取り込まれているかが、より問われるようになる」とする一方、「福祉や教育関係者など市民各層とも連携し、放送批評の層を厚くする必要がある」との考えを示しました。
 また、放送局側の問題として、「1970年代後半のENG導入により、ライブ感覚を生かす方向で番組ジャンルの融合が進み、音楽番組やドラマも情報番組化するとともに、80年代には報道にもバラエティー化が及んできた」と分析して“番組の総バラエティー化”を指摘。さらに、「80年代後半以降、デジタル・多チャンネル化が進み、放送局の生き残りが大きな課題となると、行政・業界とも産業論にシフトして “志”が退行し、廉価なバラエティーが主流になった」と述べました。また、今の30〜40歳代のスタッフや脚本家の多くは“語りたいことは何もない”世代で、社会的・文化的遺産の継承が断ち切られているとし、「過去の優れた番組など、編成・制作の歴史を次の世代に伝える研修が必要だ」としました。
 その上で、「放送局は、番組審議会の活性化などで文化事業体としての矜持を取り戻し、それを編成に反映させるべき」と述べ、番組審議会の機能を再検討して、賞揚機能を持たせるとともに、営業や編成・制作、自局の自己検証番組、さらには市民の各層とも連携するべき、と提言しました。

▽放送を文化的公共財として継承するために

 意見交換では、「放送の現場には、自分たちがどこに力を入れているのかをわかって賞の審査をしているのか、不信感があるようだ。審査する側も、どのような意識を持って賞を出すのか、難しい問題だと思う」との有識者委員の意見に対し、上滝さんは、「賞には、深夜に放送されている良い番組に注目させるという機能もある」とするとともに、「賞が陥る危険性の一つに、マニアックな志向になることがあるが、ギャラクシー賞では、ゴールデンで放送する番組もきちんと表彰するというスタンスで、19時台に放送しているバラエティー番組に優秀賞を授賞したこともある」と述べました。
 また、有識者委員から、「90年代以降、コンテンツの二次使用のために個々の局でストックを作っていく傾向にあるが、放送を文化的な公共財として継承するためにも、表彰された作品などを後から視聴できるよう、放送ライブラリーのような“パブリックな番組記録公開システム”を育てていくことが必要」との意見が述べられました。
 「デジタル・多チャンネル化で廉価なバラエティー志向が進んだとのことだが、チャンネル数の増加で逆に、表彰された番組が放送される機会も増えるのでは」との有識者委員の意見に対して、上滝さんは、「廉価なバラエティーは過渡的なもので、デジタル化の設備投資などを乗り越えれば、多チャンネル化の中で作品のマルチユースが起こり得ると期待したい」と述べました。
 さらに、有識者委員から「もっと気軽に番組を褒め、それを制作現場が受け止めるという、いい循環が作り出せないか」とする提案のほか、「最近は、大学での通年講義に放送局が人をあまり派遣しないようだが、放送界自体が自閉的になっている証ではないか。放送局は文化事業であり、社会還元もしてほしい」との意見も出されました。

以上