放送倫理・番組向上機構[BPO]


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放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
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■ 番組委員会議事のあらまし

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●2003年10月 (第6回)

「テレビドラマの現状を考える」

 10月3日に開催した今年度第6回放送番組委員会(有識者委員のみによる小委員会として開催)は、“テレビドラマの現状を考える”をテーマに、ゲストとして中町綾子さん(日本大学芸術学部専任講師)を招いて、講演を聞いた後、意見交換しました。また、BPOに寄せられた視聴者意見の概要を事務局から報告しました。

◆ テレビドラマの現状を考える

 講演で中町さんは、ドラマを取り巻く最近の状況について、「かつては人気ドラマとして話題になるものは視聴率30%を超えていたが、現在は10%台に止まるものが多いことから“ドラマ不振”と言われている」とした上で、「いまの環境では、むしろ30%取れるほうがおかしく、かつての状況を疑ってみるという視点で問題を考えたい」と述べ、特にF1層(20〜34歳女性)向けドラマの構造を中心に、話を展開しました。

▽F1ドラマ失効後のニーズの行方

 約10年前に全盛だった“トレンディドラマ”は、未来への夢を前提に、華やかな都市文化と自分探しをする主人公を描くことで、よりよいライフスタイルを追求する女性たちに理想モデルを提供してきたが、それは1990年代半ばには経済状況とも相俟って失効した、と指摘。その後F1層の価値観や美意識は、未来を期待せずにいまを楽しむ快楽主義タイプと、平凡な日常を大切に生きていこうというタイプに分かれたと分析し、そのように変化した女性の心情をすくい上げた数少ないドラマとして、“いまをどう消化していくか”という点に答えを見つけようとした『すいか』(日本テレビ系列)や “普遍的な童話のようなラブストーリー”を描いた韓国ドラマ『冬のソナタ』(NHK衛星第2)を挙げました。
 その一方で、「このように伝統的なF1ドラマとは違うニーズがあるにも関わらず、多くの制作者はどれだけそれに応えたものを提供しているのか」と疑問を呈し、「F1層の中でもどのタイプを狙うのかを認識したドラマづくりが求められる」としました。さらに、「購買力が高いとされるM2(35〜49歳男性)向けのドラマが作られてもいい」「マスではなく“わかってくれる人”に向けて作るドラマが出てきてもいいのではないか」などと述べました。

▽ドラマジャーナリズムの再検討に期待

 また、プライムタイムで放送される連続ドラマの本数が1局で週6〜7本にのぼるなどの制作環境にも言及し、「こうした量産体制の状況で個性を出すのは非常に難しい」と指摘。視聴者には、視聴率にとらわれることなく番組を評価する必要があるとし、一方、制作者には「連ドラが担ってきた、時代やその時の気分をすくい上げるジャーナリスティックな側面にも期待したい」と述べました。

▼視聴実態の把握や視聴率偏重への疑問

 意見交換では有識者委員から、「ドラマの視聴には、年齢よりもその人のライフスタイルや考え方などが影響しているのではないか」として、視聴者を年齢で大きく区分していることへの疑問のほか、「いまはテレビ全体に勢いがない。ゲームなど多メディアの中でのテレビドラマのあり方を考えるべき」といった意見が出されました。また、「オンタイムでドラマを見るという視聴形態そのものが変化している」「再放送やビデオ化などで話題が広がっていくケースもあり、総合的に見れば、“心に残るドラマ”が視聴率の高いものよりも勝つことになるのではないか」など、視聴率のみを判断基準にすることへの疑問が投げかけられました。

▼制作環境と人材育成への不安も

 委員からはまた、「ドラマの制作環境が非常に厳しくなっていることには驚いた」「ドラマを作るというより“視聴率を取るための仕組みを作る”という現状から脱却するためにも、方法論を変える必要があるのでは」との意見のほか、「外国と比べ日本のドラマは、本来さまざまな顔を持っているはずの人間の姿が描かれておらず、薄手に感じる」「オンザジョブトレーニングが機能しなくなる中で、若手の俳優やスタッフをどう育てていくかが課題」などの指摘がありました。さらに、「子ども向けのドラマが減り、多くはバラエティー番組などを見ている。彼らがドラマを読むリテラシーを身につけないまま大人になった時、ドラマはもう不要になってしまうのではないか」として、長いスパンでドラマのあり方を考えるべきだとの意見もありました。

以上