放送倫理・番組向上機構[BPO]


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放送番組委員会は
2007年5月11日をもって
解散し、新たに
放送倫理検証委員会
設立しました。

 

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●2003年9月 (第5回)

「長崎市男児誘拐殺害事件をどう伝えたか」


  9月5日に開催した今年度第5回放送番組委員会(有識者委員と放送事業者委員による全体委員会)では、7月に起きた長崎市男児誘拐殺害事件をめぐる報道について、①取材・報道上の配慮、②被疑者・被害者などの人権への配慮等を中心に審議しました。また、福岡放送の“やらせ”問題、および、BPOに寄せられた視聴者意見の概要について、事務局から報告しました。

◆長崎市男児誘拐殺害事件報道について

 4歳の男児を誘拐・殺害したとして中学1年の男子生徒が補導された同事件をめぐる報道について、初めに各放送事業者委員が自社の対応を報告。多くの社が、中学生が補導される前から容疑者が少年であるとの情報をつかんでいたため、早い段階から、神戸連続児童殺傷事件の事例なども踏まえた“取材・報道ガイドライン”を社内で確認し、ワイドショーなど情報系番組を含む関連部署や、系列各社で徹底したと説明しました。

▽地方局との連携のもと取材・報道

 具体的には、①中学校名は秘匿し、校長や教師の顔出しはしない、②取材者側から少年の氏名や学校名を明かして接触しないなど、取材や放送によって少年が特定されないよう配慮するとともに、同じ中学校の生徒への取材についても、「必ず保護者の了解と立ち会いのもと行うなどの取り決めに沿って取材にあたった」との報告が複数の社からありました。また、長崎県報道責任者会議〔亀山会〕が7月10日に取りまとめた、取材にあたっての確認事項を各社とも遵守し、東京や近隣地域から長崎入りしたクルーにもこれらを周知徹底。さらに、地元局のデスクと東京から派遣されたデスクが連携をとり、カメラクルーの数や配置等の調整を行いながら、過熱取材などの問題が起きないよう対応したとの報告もありました。しかし、「現地のクルーからは、結果的に人数が増えている状況に自分たちも身を置いていたため、メディアスクラム対応が完璧であったか不安が残るとの声があった」「東京では少年が着ていた上着などの情報を流してもそれがどの学校のものかわからないが、地元ではすぐに特定されてしまうなど、情報の受け取り方に地元とそれ以外の地域で温度差があり、取材・報道する上で相互に意見交換した」との声もありました。

▽対応分かれた顔写真の扱い

 少年の顔写真の扱いについては、12歳の少年というリアリティを伝えるためモザイクをかけて使用した社、モザイクをかけてまで放送する必要はないとして使用しなかった社など、対応が分かれましたが、使用した社でも、同じニュースの中で何度も濫用しないなどの配慮をしています。
 また、少年に関する情報については、十分な配慮を尽くした上で、犯行に及んだ背景等をひるまずに放送したとの報告もありました。
 被害者遺族に関する報道については、個別取材は受けないという遺族側の意向に従うとともに、遺族側の心情に配慮し、殺害の具体的な描写は最小限にとどめたとの対応も報告されました。
 このほか、在阪局の委員から独自の取り組みとして、ローカルニュースで3回にわたり、今回の事件と神戸の事件を関連づけながら“少年事件の被害者と加害者”それぞれに焦点を当て、当事者への取材を交えつつ、両者が向き合うことの大切さや難しさを伝えたことが紹介されました。
 また、「現場に向かう車内などでの話が近隣に情報として流布した節がある」とした上で、スタッフ同士の話が第三者に漏れないよう配慮が必要、との反省点が放送事業者委員から出されました。
 続いて、番組委員会が8月に実施した、同事件報道に関する長崎各社へのアンケート調査結果の概要を事務局から報告した後、意見交換に入りました。

▽“問題の本質”を伝える機能発揮を

 有識者委員からは、各社が慎重な配慮を重ねて報道したことへの理解が示されましたが、一方で、事件の核心を伝えきらない報道によって視聴者の不安が募った面もあったのではないか、との指摘が相次ぎました。特に、「(中学生が)被害者の性器を傷つけた」など、放送では伝えられなかった事件の性的な部分について、「今回の事件を考える上で性教育の問題は重要。表現方法や明らかにする時期は配慮した上で、事実を伝えていく必要はあるのではないか」との意見が出ました。
 また、「メディアスクラムが起きていたという新聞記事と、各社の報告にギャップを感じる。メディアスクラムを起こしていたのは他のメディアということなのか」「放送では慎重な報道がなされていた一方で、インターネットではさまざまな情報が流れていたことをどう考えるか」などの指摘があり、複合的なメディアの一部として放送を位置づけた上で自主規制のあり方を考えるべきだ、との考えも示されました。さらに、「“隠す”のではなく、“開いていく”ことによって、視聴者が問題の本質を知ることができるようメディアが機能するべきではないか。その流れの中にガイドラインも位置づけられるのだろう」との問題提起もありました。
 また、「現場ではガイドラインのとおりに動けるとは限らず、結局、取材者一人ひとりの自覚が問われる」との意見のほか、「自主規制を唱えつつ、容疑者が少年だとわかってから現地入りした取材陣の数が多くなったのであれば、そうした取材体制そのものを考え直す必要があるのではないか」との指摘もありました。

◆“やらせ”問題について事務局から報告

 この問題は、5月に放送した『ズームイン!!SUPER』内の「赤ひげ先生奮闘記」(福岡放送制作)のコーナーで、ホームレスの男性が両親へのお詫びの手紙を親戚の人に渡すシーンで、実際には制作スタッフの知人を親戚として出演させていたというものです。
 番組委員会の求めに対し、同社から9月1日に届けられた報告書に基づき、①経営トップほか6名に対する減俸等の処分内容、②研修の実施やガイドラインの周知徹底、③「放送倫理・番組向上委員会」設置等の再発防止策について、事務局から報告しました。

以上