放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2019年7月5日

日本テレビ
『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』
2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、7月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の5人が出席し、日本テレビからは取締役執行役員(コンプライアンス担当)ら3人が出席した。
まず升味委員長代行が、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりしていると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、という委員会の検証を解説し、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないという判断になったことを説明した。
これに対して日本テレビは、「丁寧な審議に感謝している。今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作にいかしていく。視聴者に自信を持って伝えられる体制を整えてから、ぜひ『祭り企画』を再開させたい」と述べた。
その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社62人が出席した。
はじめに升味委員長代行が、意見書の内容を紹介して判断にいたった経緯を説明した。岸本委員は「どこまで視聴者に伝える必要があるのかという問いが現場から聞かれたが、それ以前に、制作過程を正確に把握していなかったことが問題だ。すべてを把握してはじめて、バラエティーが豊かな番組空間を作り出せる」と述べた。中野委員は「日曜日の夜8時にこの番組を見ている人たちは、番組のコアなファンだけでなく、多様な視聴者がいることを忘れてはならない。現地コーディネーターに頼りすぎるのでなく、コーディネーターとのコミュニケーションを密にしてほしい」と呼び掛けた。さらに藤田委員は、これまでに放送倫理検証委員会が出したバラエティーの意見書(決定第7号 2009年11月17日)について触れ、「番組のすみずみまで計算しつくしてはじめてバラエティーが成り立つ」という委員会の考えに変わりがないことを説明した。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 祭り企画は全部で111回放送しているが、2つ以外の「祭り企画」を審議の対象とはしなかったのか?
A: 審議に必要なものは視聴したが、この2件について掘り下げて審議することに意味があると考えた。(升味委員長代行)
   
Q: 現地コーディネーターは、制作スタッフの一員なのか?あるいは外部の存在なのか?
A: 独立した当事者。企画が通ってはじめて経済的にも対価を得ている。制作スタッフと現地コーディネーターとの関係は、放送局と制作会社との関係とは異なる。(中野委員)
   
  制作スタッフは、企画の提案を各方面に投げかけ、提案されたいくつもの企画の中から選んだものについてロケをしている。選ばれた企画の現地コーディネーターは、制作スタッフと一体ではなく、制作会社と契約関係にある独立した他者だ。ただし、制作スタッフがその企画を採用して番組にしているのだから企画内容には責任を伴い、ロケに入ってからは制作スタッフと現地コーディネーターのコミュニケーションが大切であるのに、今回はこのコミュニケーションが欠けていた。(藤田委員)
   
  日本テレビは問題が明るみに出た当初、現地コーディネーターを切り離して外の存在であるかのように言っていたが、その後、番組制作の大切な協力者だと訂正した。委員会のヒアリングの対象は普段は放送局と制作会社だが、今回は制作会社の協力者という立場で、コーディネーターにもヒアリングに応じてもらった。(岸本委員)
   
Q: 「やらせ」「でっちあげ」という指摘については、どういう議論があったのか?
A: これまでも、委員会では、「やらせ」「でっち上げ」を定義し、その番組がこれにあたるかあたらないかという判断の仕方はとっていない。今回の『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』についていえば、バラエティー番組であり、番組の素材として番組のために何か物を作る、何かを準備するということ自体が倫理違反であるとは考えていない。そこにある事実そのものを伝える報道番組やそのようなドキュメンタリーとは違う面があると考えている。(升味委員長代行)

以上