青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第215回

第215回-2019年6月

視聴者からの意見について…など

2019年6月25日、第215回青少年委員会をBPO第1会議室で開催し、6人の委員が出席しました。(1人の委員は所用のため欠席)
委員会ではまず、5月16日から6月15日までに寄せられた視聴者意見について意見を交わしました。
深夜のバラエティー番組で、10人の女性タレントが山奥でサバイバル生活をする企画で、一人が皆から無視されたり、陰口を言うシーンについて、「子どもも見るテレビで娯楽としていじめが行われるのは許せない」などの意見が寄せられた。これに対し、委員からは、「この番組を見たら、いじめはこんなに格好が悪いとか、いじめている側に否定的な感情を起こさせる作りだった」などの意見が出されました。
6月の中高生モニターのリポートのテーマは「最近見たドラマについて」でした。29人から報告がありました。
男性カップルの日々の食卓を描いたドラマについて、「ドラマでゲイやLGBTQのことについて放送するのは大切なことだと思いました。私もこのドラマで普通の生活をしている2人を見て自分と同じだと思い、身近に感じました。2人が2人を思いやる愛は他のカップルと何も変わらない。それを見たらたくさんの人がLGBTQの方々との壁をなくせるようになると思う」、大学病院を舞台に医学界の腐敗を追及したスペシャルドラマについて、「ほとんどの人が自己顕示欲と権力への憧れを心のどこかに抱えており、一度その欲を満たしてしまうとそれで満足ではなく、むしろよりもっとほしくなってしまうのではないか、そして弱い立場の人はその最大の被害者ではないでしょうか。このドラマは、忖度がはびこる現代社会の縮図であるとも思いました」、朝の連続ドラマについて、「まだ昔を残している時期の東京が、セットで緻密に表現されていてよかった。特に、主人公が住んでいるおでん屋は雰囲気が出ていると思う。戦争についての場面は、すべて実写もしくは再現映像だと思っていた。しかし、空襲の場面などが一部アニメになっていることは斬新だと感じた」などの意見が寄せられました。委員会では、これらの意見について議論しました。
次回は7月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2019年6月25日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

深夜バラエティー番組で、女性10人が山奥で10日間のサバイバル生活を送る企画で、一人を皆が無視したり、陰口を言うシーンについて、「いじめをするひどい内容で子どもが真似をする」「子どもも見るテレビで娯楽としていじめが行われるのは許せない」といった意見が寄せられました。
これに対し委員からは、「見ていて、いい気持ちがしない番組だったが、この番組を見たら、いじめはこんなに格好が悪いとか、いじめている側に対して否定的な感情を起こさせるような番組の作りではないか」「逆にいじめはだめだとか、いじめをしている人間ってだめだと感じた」との意見が出されました。
川崎市で起きた通り魔殺傷事件の報道について、「加害者の血まみれの映像が薄いモザイクで流れ、気分が悪くなった」「保護者や子どもにインタビューするのはおかしい。ショックを受けていることは映像で流さなくても皆分かっている」「被害児童やその家族など傷ついた人にインタビューを試みたり、血だまりの現場を何度も映すなど配慮がない」「上空からの映像で被害者が運ばれる映像が流れたが、被害者や救助をしている人への配慮が全くない」などと言った意見が寄せられました。
これに対し委員からは、「取材しないわけにはいかない理由が、きちんと視聴者に伝わってないのではないか。視聴者とのコミュニケーションをインターネットなどを使って取れる時代だと思うので、そういう情報発信をしていく必要があるのでは」「犯人が倒れている映像が薄いモザイクで、相当の血が出ているというようなものが放送されていた。あれは犯人だったからできたのか。もしそれが被害者であったならば、あの映像を出しただろうかという疑問はあった」「空撮のヘリコプターが多数飛び過ぎていたような気はする。視聴者との関係性ということで言えば、こういう事件のときに本当に必要なのかと感じた」との意見が出されました。
これらの件に関しては、これ以上話し合う必要ない、となりました。

中高生モニター報告について

34人の中高生モニターにお願いした6月のテーマは、「最近見たドラマについて」でした。また「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で29人から報告がありました。
「ドラマについて」では、複数のモニターが意見を寄せたドラマが5番組あり、と『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)、『インハンド』(TBSテレビ)にそれぞれ3人、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)と『ラジエーションハウス』(フジテレビ)、『きのう何食べた?』(テレビ東京)にそれぞれ2人から報告がありました。上記の『俺のスカート、どこ行った?』と『きのう何食べた?』の他、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK総合)を報告したモニターも1人おり、性的マイノリティーが登場するドラマへのリポートが6人から寄せられています。
「自由記述」では、「映画やドラマに影響を受けたとされる事件が起こることがあるが、だからといって内容が過激なドラマをなくしたり批判したりすることは間違っていると思う。その作品は誰かの娯楽として存在している可能性があるからだ」と意見を述べるモニターがいました。また、子どもが被害者となった事件の際に、学校側が児童・生徒への取材・撮影を控えるよう要請しているにも関わらず、その後も学校周辺での取材を続けるマスコミへの不快感を訴える意見も寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『100分de名著 アルプスの少女ハイジ』(NHK Eテレ)を4人が、『ドキュメンタリードラマスペシャル reset~あの日、人生を変えた~』(NHK BS1)を3人が、『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ)を2人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『ラジエーションハウス』(フジテレビ)について書いてくれたモニターは、将来外科医師になりたいという。やはり子どもたちは、自分の将来のこと、進学のことなどを常に考えているので、ドラマでも、そういうことにつながるテーマだと、入りやすいだろうと思った。

    • 『白衣の戦士!』(日本テレビ)について、ふだん接することが少ないナースの人がどういう生活を送り、どういうことを考えているか、ドラマを通じて見ることができたのが楽しかった、と書いているが、やはりある切り口があること、企画が斬新であることが評価されているのではないか。

    • 『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)は、主人公の俳優の演技が強烈だったと思う。このテーマはうまくいくのかいかないのかと思っていたが、「すごく感動した」というリポートを見ると、子どもたちはそれぞれの見方をしながら、何かを受けってくれたのだろう。

    • 『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)は、タイトルがうまい。このタイトルに惹かれて、みんな見たくなるのではないか。

    • 『あなたの番です』(日本テレビ)について、殺人の仕方が面白い、と書いてきたモニターがいたが、これは、割と正しいというか、オーソドックスな感想だと思う。ドラマに限らず、小説でも、残忍なものを読むと、人間はモヤモヤしてもスッとするところがある。最近、そういうものを表にしてはいけないという傾向があるが、ごく少数の割合でそれに誘発される人がいるかもしれないが、それを全部なくしてしまうことは、かえって危ないのかもしれない。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『インハンド』(TBSテレビ)について、今まで病院の先生や警察のドラマは数多く制作されてきましたが、内閣官房や寄生虫学者にスポットをあてて制作しているのは面白いと思った。人気俳優が出演しているため、私たち中高生の関心も高く、影響を与えないように寄生虫をかわいいイラストで表現するなど配慮があって素晴らしいドラマだと思いました。(北海道・中学2年・女子)

    • 『きのう、何食べた?』(テレビ東京)について、改めてゲイの方やLGBTQの方について考えるきっかけになりました。私はもともと尊敬している人がゲイの方だったり、割と早いうちからいろんな人に興味があったので、LGBTQの方々についての本も読んでいました。それにこのドラマの影響もあって、私はLGBTQの方は身近な存在に感じています。ゲイの方について話していたとき、一人のクラスメイトが当たり前のように「先生や公務員になるのは無理やな。更衣のこともあるし」と言いました。まさかクラスメイトがそんな風に思っているとは知らなかったので、ショックでした。私はドラマでゲイやLGBTQのことについて放送するのは大切なことだと思いました。私もこのドラマで普通の生活をしている2人を見て自分と同じだと思い、身近に感じました。誰かを愛するということについても同じです。2人が2人を思いやる愛は他のカップルと何も変わらないです。それを見たらたくさんの人がLGBTQの方々との壁をなくせるようになると思います。(兵庫・中学3年・女子)

    • 『白い巨塔』(テレビ朝日)について、自分を失うほど権力を求め翻弄された一人の天才外科医。このドラマは財前という男が頂点からどん底に落ちていく模様を描いています。初めは皆、誰かを助けたいという純粋な思いで職に就いたはずです。それなのに、いつしかその心を忘れ自分の利益を何よりも優先させるようになってしまったのはなぜでしょうか。何が彼らを変えてしまったのでしょうか。それを解くキーワードは「権力」であると私は考えます。ほとんどの人が自己顕示欲と権力への憧れを心のどこかに抱えており、一度その欲を満たしてしまうとそれで満足ではなく、むしろよりもっとほしくなってしまうのではないか、そして弱い立場の人はその最大の被害者ではないでしょうか。このドラマは、忖度がはびこる現代社会の縮図であるとも思いました。(東京・高校1年・女子)

    • 『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ)について、ドラマの中で印象的だったのは、ただ家を売るだけでなく、現代の問題、例えば老人の居場所がどんどんなくなっているところや、心が自分の性別とは違う人の話や同性愛などのLGBTの人たちの話が出てきていた。その人たちへのぴったりの家を探すためにその現代の問題にどう接していくかが描かれていてとても架空の話とは思えない、現実味のあったドラマだった。また、主演が北川景子さんということもあり、とても演技が上手く恋の要素や笑える要素も含まれていてまさに笑いあり、涙ありという言葉がふさわしいドラマだったと思う。こういうドラマが増えれば、現代人が目を向けなければならない問題、つまり今の若者たちがあまり関心のない問題もたくさんの人が考えることができるんじゃないかなと思った。(大阪・高校1年・女子)

    • 『連続テレビ小説 なつぞら』(NHK総合)について、東京編では、まだ昔を残している時期の東京が、セットで緻密に表現されていてよかった。特に、主人公が住んでいるおでん屋は雰囲気が出ていると思う。
      戦争についての場面は、すべて実写もしくは再現映像だと思っていた。しかし、空襲の場面などが一部アニメになっていることは斬新だと感じた。戦争を題材にしたアニメ作品は多いが、ドラマの場合はそうでもないと思う。確かに、当時の白黒でやや不鮮明な映像を見るよりも想像しやすい点がよかったと感じた。(東京・高校1年・男子)

    • 『あなたの番です』(日本テレビ)について、「毎回人が死にます」のキャッチコピーに寄せられて見始めました。人間の心の移り変わりももちろん見どころの一つだと思いますが、それよりも私は「殺人の仕方」に重点を置いて見ています。小説では比較的「トリック」を重点にしたものが多いのですが、推理ドラマではあまり見ることがありません。しかし、この番組では、不思議な形で見つかった遺体などがあったので、面白かったです。(島根・高校1年・女子)

    • 『3年A組~今から皆さんは人質です~』(南海放送/日本テレビ)について、毎回予想もしない方向に物事が進んでいき、主人公がヒーローにも悪者にも見え、そのことが視聴者をこのドラマにひきつけたのだと思います。高校生という大人に近いけれどまだ子どもであるときに、このドラマに出会えたことで今後の人とのコミュニケーションに多大な影響を与えてくれたと思っています。自分に正直であること、自分の言動に責任を持つことの大切さを改めて感じました。また、見ている側にも俳優さんたちの熱意がひしひしと伝わってきて、毎回、涙なしに見ることができませんでした。(愛媛・高校2年・女子)

  • 【自由記述】

    • 映画やドラマに影響された事件が起こることがある。だからといって、内容の過激な映画やドラマをなくしたり、批評したりすることは間違っていると思う。その作品は誰かの娯楽として存在している可能性があると思ったからだ。(群馬・高校1年・女子)

    • ニュースのスポーツ特集が気になります。スポーツの国際試合などで、日本が勝った時は勝ったことを大々的に放送しています。しかし、負けてしまったときは、「日本チームの勝敗は…?」のように放送してCMの後に結果を言う場合が多いです。これらは、できるだけ多くの人に放送を視聴してほしいがためのやり方なのだろうと思っています。ですが、僕はこの方法には何か違和感があり、もう少しよい報道の仕方がありそうな気がします。(東京・高校1年・男子)

    • 川崎通り魔殺傷事件について、事件があった当日、学校側が「生徒などへの取材、撮影はお控えください」ということを言ったはずでしたが、事件数日後までマスコミの皆さんが校門付近で撮影を続けており、とても不快でした。(神奈川・高校1年・女子)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ)について、この番組は「あの時のあの人、こんなふうになってるの?!」という見方もできるし、そのことを知らなくても「こんなことがあって話題になっていたんだなぁ」という見方もできるなと思いました。またいろいろな生き方を学べるので希望になるかもなと思いました。
      この日は櫻井翔さんが出演、今まで取材してきたオリンピックの中で、衝撃を受けたアスリートを紹介していました。櫻井翔さんはアイドルとして、俳優として、また、キャスターとしても活躍していますが、オリンピックを6大会取材していると聞くと、改めて桜井さんってスゴイ!と感じました。(神奈川・高校1年・女子)

    • 『100分de名著 アルプスの少女ハイジ』(NHK Eテレ)について、現代文の授業のような読み解き方で、もともと知っていた作品でしたが、新たな面が見られたと思いました。今後とも視聴したいと思います。(神奈川・高校1年・女子)

    • 『ドキュメンタリードラマスペシャル reset~あの日、人生を変えた~』(NHK BS1)について、パラアスリートたちのスポーツとの出会いやどのように障害をもったのかなど、彼らの人生の「リセット=生まれ変わり」について知ることができました。障害の「壁」など存在させない彼らの生き方に感銘を受けました。(広島・高校2年・男子)

調査研究について

担当の中橋委員より、調査研究(青少年のメディアリテラシー育成に関する放送局の取り組みについて)の進捗状況について報告がありました。

今後の予定について

  • 山形県の放送局の方々と青少年委員会委員との意見交換会について、10月3日に開催することが決まりました。

以上

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