放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会

2019年2月14日

宮崎・鹿児島地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会開催

放送倫理検証委員会と宮崎・鹿児島地区のテレビ・ラジオ局9社との意見交換会が、2019年2月14日、鹿児島市内で開かれた。放送局出席者は9局38人、委員会からは神田安積委員長、岸本葉子委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員の4人が出席した。
初めにBPOの濱田純一理事長が「BPOとはなんだろうか」と題してBPOの性格や活動を説明し、「放送人の誇りと緊張が、放送の自由と自律を支えていく。『職業倫理』の基本である、この誇りと緊張を思い起こしてもらう機会をつくることがBPOの役割だ」と話した。
意見交換会は二部構成で行われた。まず第一部では、各局が最近対応した具体的な事例を取り上げ、実際に放送したDVDを見ながら、意見を交わした。この中で、事件を報道した際、被害者側から実名や写真を放送しないでほしいと言われたという複数の放送局の報告に対して、神田委員長は「放送した理由をきちんと説明できるかどうかが大事だ。一律的な答えがあるわけではないので、各放送局が自律的に対応してほしい。その一方で、視聴者の知る権利の観点から、報道しなかった場合のデメリットにも配慮してほしい」と述べた。容疑を持たれている男性が自殺した際、この男性に「さん」を付けて報道したところ、視聴者から抗議が多かったという報告に対して、渋谷委員は「どういう放送をするかしないかは放送局の責任で判断する必要があり、抗議の量に左右されることは、報道機関としてあるべき姿ではないと思う」と述べた。
社会的に問題になった歌手の曲を放送するとクレームが多いというFM局の報告に対して、藤田委員は「一定期間、放送しないという姿勢は理解できるが、行き過ぎた『自粛』には批判もある」と指摘した。また岸本委員は「リスナーの意見に耳を傾けつつも、自分たちはこう考えて放送したときちんと説明できることが大切だ。事件や事故の報道の際に、こういう理由で放送したという説明責任が必要なことと同じだ」と話した。
続く第二部は、宮崎・鹿児島両県の放送局にとって大きな課題の災害報道から議論が始まった。鹿児島県の口永良部島の噴火警戒レベルが上がって住民説明会が開かれた際、取材のために島に入るかどうか、放送局によって判断が分かれた事例が報告された。また宮崎県の放送局からも、新燃岳の噴火取材の難しさについて話があった。東日本大震災のあと、岩手・福島の放送局からヒアリングをした経験がある藤田委員は、取材の安全の大切さを強調するとともに、「被災者の情報を匿名で発表する自治体がある中で、被災直後は、避難所の映像を放送することが大切な安否情報の提供になる。放送する時点で地元の人が必要としている情報を考えて発信することが必要だ」と述べた。
続いてインターネットを放送に利用する際に直面した問題について、実例が報告された。神田委員長は、委員会が2017年9月に出した委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」に触れながら、まず情報の正確さが求められること、そのうえで著作権の権利関係のクリアが問題となることを指摘、また、市議会のホームページを引用して放送したところ議長から抗議を受けたという事例に対して、「公的な機関のホームページであり、放送で引用しても問題ない」と説明した。
意見交換会を通して藤田委員は「委員会が出す意見書を懲罰的に受け止めず、放送にいかしてほしい」と、また岸本委員は「きょうの参加各局は視聴者との距離が近いので、それを番組制作の力にしてください」と感想を述べた。また渋谷委員は「『これを伝えたい』という気持ちを大切にして番組作りにあたってほしい」と話し、神田委員長が「この番組を見たいという視聴者の信頼をそこなわず、放送する勇気をもってほしい」と締めくくった。
最後に、参加局を代表して南日本放送の有山貴史取締役が「私たちの一丁目一番地は『信頼』だということを改めて認識する有意義な会議だった」と述べて、3時間30分を超える会議を終えた。

終了後、参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 大切なのは、私たち放送する側の「覚悟」だと思った。これからも緊張感を持って業務にいかしていきたい。

  • 各社の事例紹介などを通じ、放送倫理とは「視聴者の信頼を裏切らないこと」だと感じた。

  • 報道する側、報道される側、双方から報道を考えるいい機会になった。

  • SNSが発達した時代、ニュースソースの正確さの見極めが大切だと痛感した。

  • ネットと放送局の大きな違いは「信頼」であることを再認識した。

  • 災害報道に関して、災害発生時はキー局から全国報道の要請が殺到するのが常だが、特に初動段階では地元住民に向けた「命を守るための情報発信」が大事、という参加局の意見はもっともで、賛同できた。

  • エリアを超えて、鹿児島・宮崎合同で開催されたことでお互い同じような問題、悩みを抱えていることが分かった。今後は益々こういう情報共有の機会を増やし団結して取り組んでいかなければならないと思う。

  • BPOは、我々のすぐ脇にいる組織なのだと認識し、力づけられた。今日の話を組織内で共有し、よりよい報道を出せるように努めていきたい。

以上