放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第130回

第130回–2018年10月

フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』について討議終了

第130回放送倫理検証委員会は10月12日に開催され、フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』が放送したオウム真理教元幹部の死刑執行をめぐる特集で、オウム真理教時代の映像が後継団体内で配布された時期を誤って放送した事案について、前回に引き続き討議した。委員会は、当該放送局から提出された追加報告書について意見交換を行い、当該番組を制作したのが「委員会決定 第28号」で審議の対象とした番組を制作した部局と同じであり、決定通知から半年以内に当該事案が発生したことを懸念する厳しい意見が出されたが、当該事案については訂正とお詫び放送もしており、新たに具体的な再発防止策が策定・実施されているとして討議を終了した。

議事の詳細

日時
2018年10月12日(金)午後5時~午後6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. オウム真理教元幹部の死刑執行に絡む特集で、オウム真理教時代の映像が後継団体で配布された時期を誤報したフジテレビの『直撃LIVEグッディ!』および『報道プライムサンデー』についての討議を終了

フジテレビの情報制作局が制作した情報番組『直撃LIVEグッディ!』は、オウム真理教元幹部7人の死刑が執行された後、後継団体の一つであるアレフがオウム真理教時代に作成された映像を広く配布したと7月13日(金)の放送で伝えた。また、7月15日(日)には、報道局制作の『報道プライムサンデー』が、『直撃LIVEグッディ!』が入手した放送素材を使って同趣旨の内容を報じた。しかし放送後、映像提供者から当該映像は元幹部らの死刑執行前から配布されているものであり、執行後に配布されたものではないとの指摘があったため、当該放送局は映像提供者に謝罪するとともに、7月22日に『報道プライムサンデー』、23日に『直撃LIVEグッディ!』でそれぞれ訂正とお詫びの放送を行った。
9月の委員会では討議の結果、(1)映像提供者が映像の配布時期について説明しているにもかかわらず、なぜ担当ディレクターが配布時期について誤った思い込みを持ったのか、(2)他のスタッフによるチェック、および「『とくダネ!』2つの刑事事件に関する意見(委員会決定 第28号)」に対応して提出された当該放送局の「再発防止に向けた取り組み」に記されたチェック機能等がなぜ働かなかったのかなどについて、さらに詳しい説明を求める必要があるとして、当該放送局に対し追加質問を行った。
これに対して当該放送局から追加の報告書が提出され、委員会では、この回答内容などを中心に意見が交わされた。委員からは、「当該番組企画のテーマである後継団体の動きそのものについて直接取材が行われておらず、映像の配布時期など基本的な活動状況を確認していない点は問題である」「他の放送局の番組がすでに当該映像について報じた"後追い"企画であったにもかかわらず、当該放送局が"独自"と銘打った背景には、自分たちの入手した情報を大きく見せたいという心理があり、都合の良い情報へすり替わってしまったのではないか」などの指摘があった。
また、「オウム真理教元幹部らの死刑執行後に、改めて当該映像が配布されたのであれば、それ自体が極めて重要なニュースだろう。番組スタッフ間でこの重要性を踏まえたやり取りが行われていれば、配布時期の確認につながったはずだが、報告書ではこの点が解明されていない。こうした報道における感性の問題は、これまでに打ち出された再発防止策ではカバーできないものであり、この点こそが、再発防止策に盛り込まれるべきではないか」との指摘もあった。
さらに、「『委員会決定 第28号』を踏まえて実施されているはずの再発防止策では、編集会議で決まった翌日の放送内容について報告を受けた担当局長は、注意すべきポイントを精査し、番組にフィードバックする仕組みとなっているが、追加報告書によれば、編集会議における議論や担当局長の対応は十分とはいえず、再発防止への問題意識が乏しいように感じられる」との意見も出された。
他方で、当該放送局は追加報告書で「チェックを担当するスタッフに『部下を信頼しても信用するな』という十分な意識の徹底がなされず、取材ディレクターの思い込みに適切に対応できなかったと述べている。これは、スタッフは信頼しても情報は疑ってかかる姿勢を表明したものと受け止められ、評価できる」との意見が出された。また、「今後、全員参加の編集会議で担当ディレクターが事実確認をどのように行ったかを取材先とのやり取りまでさかのぼって確認できるようにする、編集会議では実際に取材したディレクターが直接説明するなど、番組が新たに講じることになっている再発防止策について、その実施状況を見守りたい」との意見があった。
委員会では、上記のとおり、追加報告書を踏まえてもなお様々な懸念が存する旨の意見が出されたが、訂正とお詫びの放送が行われ、新たに具体的な再発防止策が策定・実施されており、自主・自律の対応がなされていることから、討議を終了することとした。

以上