放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第262回

第262回 – 2018年10月

「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2018年10月16日(火)午後4時~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員

1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案

対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。これに対しCBCテレビは、「一連の報道は、出生地の疑問やその根拠を再検証したもので、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、申立人らが偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えない」と主張している。
前回の委員会後に開かれた第3回起草委員会で修正された「委員会決定」案が今月の委員会に提案され、了承された。その結果、来月上旬に「委員会決定」を通知・公表することになった。

2.「芸能ニュースに対する申立て」事案

対象の番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。
番組の中ほどで「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張に理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。これに対してTBSテレビは、意図的に申立人を貶めた事実は全くないとする一方、放送に「言葉足らずであって、誤解を与えかねない部分があった」として、申立人におわびするとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明することを提案し、出来る限りの対応をしようとしてきたとしている。
委員会ではヒアリングに向けて起草担当委員が作成した論点と質問項目の案について検討した。次回11月の委員会で、申立人、被申立人双方にヒアリングを実施することを決めた。

3. 審理要請案件「夫婦間トラブル報道に対する申立て」~ 審理せず

2017年8月28日に放送された朝の情報番組で、ある地方議会議員が妻とトラブルになり、けがをさせた傷害の疑いで書類送検されたという報道が約12分間行われた(以下、「本件放送」という)。議員は、事実に反する報道によって名誉を毀損されたなどと訴える申立書を2018年8月26日付で委員会に提出した(以下、「本件申立て」という)。
委員会運営規則第5条1項の苦情の取り扱い基準は、審理の対象となる苦情について「苦情申立人と放送事業者との間の話し合いが相容れない状況になっているもので、原則として、放送のあった日から3か月以内に放送事業者に対し申し立てられ、かつ、1年以内に委員会に申し立てられたものとする」としている。
委員会は、この規定に照らして本件申立てを審理するかどうか検討し、審理対象外と判断した。理由は以下のとおりである。
本件放送の直後、申立人は、代理人の弁護士を通じて局に対して「書類送検された」、「ストーカー登録をされた」との2点の報道は誤報だと指摘して訂正を申し入れている。これに対して局は2点が誤報だったことを認め、同日の深夜、局の担当者と同弁護士が面談した結果、合意が成立し、局はこの合意に沿うかたちで、翌日の同じ番組内で2点の誤報を訂正し申立人の実名を出してお詫びをする放送を行っている。これ以降、本件申立てまでの間に、申立人側から局に対してお詫び放送に不満を示したり、さらなる対応を求めたりした事実はない。
以上の事実経過から、本件放送直後の局に対する申立人の苦情申し入れは、局がお詫び放送をしたことによって解決したと判断される。苦情の取り扱い基準にある「苦情申立人と放送事業者との間の話し合いが相容れない状況になっているもの」にも該当しない。お詫び放送から本件申立てに至る約1年もの間、申立人が局に対して何らの苦情を伝えてこなかったことは、この点を裏付けている。
なお、本件申立てが、上記の本件放送直後の苦情申し入れに含まれない権利侵害などを新たに申し立てる趣旨であるならば、それらは本件申立てで初めて主張することになり、苦情の取り扱い基準にある「3か月以内に放送事業者に対して申し立てられ」た苦情に当たらない。
以上のように、委員会は本件申立てを審理対象外と判断した。

4. その他

  • 近畿地区2府4県の民放、NHKとの意見交換会を来年1月29日に大阪で開催することになった。

  • 次回委員会は11月20日に開かれる。

以上