第260回 – 2018年7月
「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案の審理…など
議事の詳細
- 日時
- 2018年7月17日(火)午後4時~6時40分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案 審理
2.「芸能ニュースに対する申立て」事案 審理
3. その他 - 出席者
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奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員
1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案
対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。
この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。これに対しCBCテレビは、「一連の報道は、出生地の疑問やその根拠を再検証したもので、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、申立人らが偽造したという印象を一般の視聴者が抱くとは思えない」と主張している。
前回の委員会でのヒアリング、審理を受けて、起草委員会が開かれて「委員会決定」案が起草され、今月の委員会では担当委員が決定案を説明して審理した。審理の結果を踏まえ、第2回起草委員会で決定案を修正し、次回委員会に提案することになった。
2.「芸能ニュースに対する申立て」事案
対象の番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。 番組の中程で「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張には理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。
前回の委員会で審理入りが決定したのを受けて、TBSテレビから答弁書が提出された。答弁書の中で、TBSテレビは、意図的に申立人を貶めた事実は全くないとする一方、放送に「言葉足らずであって、誤解を与えかねない部分があった」として、申立人におわびするとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明する提案し、出来る限りの対応をしようとしてきたとしている。
今後、申立人から反論書、TBSテレビから再答弁書が提出される見込みで、次回委員会でさらに審理を進める。
3. その他
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放送人権委員会は7月4日に東京・台場のフジテレビを訪問した。テレビ局の報道現場について理解を深める目的で、奥委員長ら委員7人が参加した。
委員会では事務局より報告した後、委員が感想を述べた。
当日は、まずフジテレビの報道の体制や取材から放送に至る業務の流れ、危機管理態勢の取り組みについて説明を聞いた。このあと報道センターへ移動し、夕方のニュース番組の放送直前のスタジオを見学したり、字幕スーパーのチェック体制や速報を出す仕組みの解説を聞いた。また、放送本番を迎えても作業が続く映像の編集現場(NV室)やサブ(副調整室)での送出の様子をリアルタイムで見学した。
委員からは、「大人数が時間に合わせて動き回ってニュースを毎日放送しているのは、まさに職人の世界だと思った」、「インターネット上の情報等の真偽の見極め方といった最前線の話が聞けて参考になった」、「ニュース素材の編集において、委員会決定(第50号「大津いじめ事件報道に対する申立て」)を踏まえて改善している点の説明があり、私たちの存在意義を感じた」などの感想が出された。 -
新潟県内の民放、NHKとの意見交換会を9月27日(木)に新潟市で開催することになった。
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8月の委員会は休会とし、次回の委員会は9月18日に開かれる。
以上