第259回 – 2018年6月
「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など
議事の詳細
- 日時
- 2018年6月19日(火)午後3時~8時50分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案 ヒアリング、審理
2.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」委員会決定についての対応報告の検討
3. 審理要請案件「芸能ニュースに対する申立て」
4. その他 - 出席者
-
奥委員長、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、白波瀬委員、二関委員、廣田委員、水野委員
1.「命のビザ出生地特集に対する申立て」事案 ヒアリング、審理
対象となったのは、外交官・杉原千畝の出生地をめぐって、CBCテレビが2016年7月から翌年6月までに報道番組『イッポウ』で10回にわたり放送した特集等。岐阜県八百津町は千畝の手記などをユネスコの「世界記憶遺産」に登録申請したが、番組では「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとして、千畝の戸籍謄本についての検証や千畝の出生地が記された手記の筆跡鑑定の結果等を放送した。この放送について、手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが「手記は偽造文書であるとの印象を一般の視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を訴え申し立てた。
今月の委員会では、申立人と被申立人のCBCテレビにヒアリングを実施し、詳しい話を聴いた。
申立人側は、NPOの副理事長2人が代理人の弁護士とともに出席し、「鑑定結果について、『完全に違う』という鑑定員の発言や『千畝の文字ではない可能性が極めて高いという結果が出ました』というナレーションがあり、現在、NPOが手記を保管していることからすれば、改ざんに申立人らが関与しているとほぼ特定する結論になっている。一連の放送の中では、『改ざん』、『偽造』、『偽物』という言葉が使われているし、アナウンサーの表情や態度からも、視聴者に改ざんの印象を与えていると理解する。取材のときには偽造や改ざんの可能性に関する指摘や質問等は一切なく、納得して帰られたので、放送を見て非常に驚いた」等と述べた。
CBCテレビからは報道の責任者ら3人と代理人弁護士が出席し、「手記の清書前の原稿で出生地が書き換えられていて、千畝本人が行ったのか、その可能性を探る方法として筆跡鑑定を行った。その結果、千畝の筆跡とは違う可能性が高いと伝えただけであり、いつ、誰が書き換えたかについては言及しておらず、手記が偽造や改ざんされたと断定するような放送はしていないし、視聴者もそう受け取ることは無いと考える。報道の意図は、手記が真正なものか偽造されたものかを確かめるものではなかったので、わざわざ申立人に筆跡鑑定の結果は問わなかったが、『手記は誰が書いたものですか』という質問はしている」等と述べた。
ヒアリング終了後、本件事案の論点を踏まえ審理を続け、その結果、担当委員が決定文の起草に向けて準備に入ることになった。
2.「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」委員会決定についての対応報告の検討
本年3月8日に通知・公表が行われた委員会決定第67号「沖縄の基地反対運動特集に対する申立て」(勧告 人権侵害)に対して、東京メトロポリタンテレビジョンから対応報告が提出され、委員会はこれを了承した。
3. 審理要請案件「芸能ニュースに対する申立て」
委員会は、本件申立ての審理入りを決定した。
番組は、2017年12月29日に放送されたTBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター超豪華!芸能ニュースランキング2017決定版』。
番組の中程で「14位 俳優・細川茂樹 事務所と契約トラブル」とナレーションがあり、「昨年末、所属事務所から『パワハラ』を理由に契約解除を告げられた細川茂樹さん。今年5月、『契約終了』という形で、表舞台から姿を消した。今年は、芸能人と事務所をめぐるトラブルが目立った」と伝えた。
この放送について細川氏は、事務所からパワハラを理由に契約解除されたことをわざわざ強調して取り上げているが、東京地裁の仮処分決定で事務所側の主張には理由がないことが明白になっており、申立人の名誉・信用を侵害する悪質な狙いがあったと言わざるを得ないと主張し、謝罪と名誉回復措置を求めて申し立てた。
これに対してTBSテレビは、委員会に提出した「経緯と見解」において、申立人を意図的に貶めようと放送したという主張はまったくの誤解だとする一方、放送に「言葉足らずであって誤解を与えかねない部分があった」として、申立人に謝罪するとともに、ホームページあるいは放送を通じて視聴者に説明する意向を示したが、当事者間での話し合いでは解決に至らなかった。
委員会は、本件申立ては委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理入りすることを決めた。
4. その他
- 次回委員会は7月17日に開かれる。
以上