第199回-2018年1月23日
視聴者からの意見について…など
2018年1月23日、第199回委員会を午後4時30分からBPO第1会議室で開催、7人の委員全員が出席しました。
委員会ではまず、2017年12月1日から2018年1月16日までに寄せられた視聴者意見について議論しました。その結果、いずれの番組も討論など次の段階に進むまではないとなりましたが、全裸でお盆などを使って股間を隠す芸人が芸に失敗した生放送のバラエティー番組と、出演者が顔を黒く塗るメークを施して登場した別のバラエティー番組に対して、放送局に留意してほしい点があるとして以下のような意見が出されました。
お盆芸の失敗があった番組については、当該放送局から自主的に企画意図と見解を記した文書が提出されました。それによると、「入念なリハーサルを経たうえで、さらに万が一失敗したとしても局部が露出することは起こらない工夫を施してお盆芸を披露…」などと説明されていました。委員からは、「そのようなことであれば、公然わいせつということにはならないのではないか。そのような視点で問題にするという考えはない」としたうえで、「生放送でこの芸を放送した場合、あとで言い訳が立たないようになった可能性もあった」「生放送で失敗したときに、言い訳をしなければならないのであれば、芸として確立しているとは言えないのではないか」などの意見が出されました。
出演者が顔面を黒く塗るメークをしていたことに対して多くの視聴者から「黒人差別を助長するのではないか」などの意見があった番組については、「黒人差別などの意図があってやったのではないと受け止めている」としながらも、「これだけ外国人が増えてきて、以前のように外国人の視聴者がいることを考えないで番組を作っていた時代とは違っているということも意識しなければいけない」など、社会の変化を敏感に読み取るよう求める声が上がりました。
1月度の中高生モニターのリポートのテーマは「冬休みに見た番組の感想」で、年末年始の特番などについて書かれた中高生モニターのリポートを基に委員が議論しました。
調査研究については、委員会開催の直前に行った放送局との意見交換会で出された意見を、発表の際にどのように生かすかなどについて意見が交わされました。
次回は2月27日に定例委員会を開催します。
議事の詳細
- 日時
- 2018年1月23日(火) 午後4時30分~7時00分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
その他 - 出席者
- 汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、菅原ますみ委員、中橋雄委員、緑川由香委員
視聴者からの意見について
生放送のバラエティー番組で、裸芸の芸人が芸に失敗し、一瞬股間が見えたように放送されたことについて、「青少年の視聴が想定される時間帯であり、大変不適切である。リスクの高い裸芸を地上波で放送することに対して規制を強く望む」「子どもや社会への影響が大きい。電波上の公然なわいせつ行為は、電車内の痴漢行為や街中を露出して歩く行為と同等な不愉快さを感じる。彼自身の芸への意識や倫理観の欠如と思われる」などの意見が寄せられました。これに対し、当該放送局から自主的に提出された報告書によると、「生放送にあたり、この芸人は番組制作スタッフの協力のもと入念なリハーサルを経たうえで、さらに万が一失敗したとしても局部が露出することが起こらない工夫を施してお盆芸を披露、放送いたしました」と説明されていました。委員からは、「生放送でこの芸を放送した場合、あとで言い訳が立たないようになった可能性もあった。番組制作にあたっては、そのような事態が起こらないよう十分に配慮しなければならない」「生放送で失敗したときに、言い訳をしなければならないのであれば、芸として確立しているとは言えないのではないか」などの意見が出されました。この件については、これ以上、話し合う必要はないとなりました。
バラエティー番組で、出演者の一人が顔面を黒く塗って登場したことについて、「人種差別を笑いの対象にし、子どもも見る時間帯に放送している。個人的な不快感というだけでなく、倫理的に許されないことではないか」「日本の倫理規定は分からないが、アメリカなど先進国では人種差別ととられるものだ」「人権意識の低さとモラルのなさに驚きと怒りを感じる。放送局にはチェック機能があるはずだが、視聴率が取れれば何でも流していいと思っている姿勢が垣間見える」などの意見が寄せられました。これに対し、委員からは、「黒人差別という意図で放送したのではないと受け止めているが、今、日本でもこれだけ外国人が増えてきて、以前のように外国人の視聴者がいることを考えないで番組を作っていた時代とは社会情勢が変化しているということも意識しなければいけない」などの意見が出されました。この件については、これ以上、話し合う必要はないとなりました。
中高生モニター報告について
34人の中高生モニターにお願いした1月のテーマは、「冬休みに見た番組の感想」です。また、「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で30人から報告がありました。
「冬休みに見た番組の感想」と「自由記述」をあわせると、『第68回NHK紅白歌合戦 夢を歌おう』(NHK 総合)に9人、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ)に4人、『第94回箱根駅伝』(日本テレビ)に2人から報告がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『歌唱王~歌唱力日本一決定戦』(日本テレビ)、『アラスカへの憧憬~亡き父・星野道夫を追って』(NHK BS1)をそれぞれ2人のモニターが取り上げました。
◆委員の感想◆
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【冬休みに見た番組の感想】について
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今回の報告は特別番組が多く寄せられているので、年末年始に家族で見て楽しむことができるような番組を好んで見てくれていたという印象を持った。
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年末に家族や親戚がそろって『紅白歌合戦』(NHK総合)を見て、年始には『箱根駅伝』(日本テレビ)をまたみんなで見て声援を送るというモニターが何人かいたが、このような年末年始のステレオタイプが今も昔も変わらずあるということはいいことだと思う。
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『夢対決2018 とんねるずのスポーツ王は俺だ!!5時間スペシャル』(テレビ朝日)を見て、「勝負の途中はいろいろな暴言を浴びせたりするシーンがあったが、試合後には互いをたたえあい握手をしていて素晴らしいと思い感動した」という感想があった。「熱血」や「真面目」と「お笑い」というものはかなり接近しているということに気が付いたのだろう。
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ドラマ『anone』(日本テレビ)について、「(この脚本家が描く)家族の愛情は本当に悲しくて現実的で美しい」「私たちが日常で感じる不平等感、欲の醜さ、社会のゆがみへの怒りはこの作品に昇華されている」という報告があったが、文学作品を評価するような視点で、大人っぽいと感じた。
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◆モニターからの報告◆
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【冬休みに見た番組の感想】について
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『第94回箱根駅伝』(日本テレビ) お正月、父方・母方の親戚それぞれに集まった際にずっとテレビで見ていたのが箱根駅伝の中継(元旦は実業団のニューイヤー駅伝)でした。ずっと集中して見ているわけではないのですがスタートからゴールまでずっとテレビがついていて、その都度、親戚の誰かが見ていました。1区間20キロ近い距離を走っていくのですが、飽きることなく見ていました。何が魅力的なんだろう?と思うのですが、選手の損得なしのひたむきさと結果が分からないこと、また放送中に実況されるさまざまな情報(選手のエピソードやコースの説明など)に引き込まれるのだと思いました。(千葉・中学2年・女子)
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『第68回NHK紅白歌合戦 夢を歌おう』(NHK 総合) 親戚が集まって、みんなで食事をしながら番組を観た。プロの歌手の歌唱力は素晴らしく、テレビ越しでも十分に伝わってきた。平井堅さんの「ノンフィクション」を初めて聴き、その歌詞の奥深さを感じた。その後、他の番組の中で「自殺した友人へ送った歌」ということを知り、この歌詞の重みを知った。特に、生きることの難しさを踊りで表現していた片足のダンサーが曲の内容をより分かりやすくしていた。もう一人、メッセージとして強く印象に残った歌が、竹原ピストルさんの「よー、そこの若いの」である。力強い歌声と、だれにでも伝わるメッセージ歌詞に勇気がもらえるような感じがした。特に、「君だけの花の咲かせ方で、君だけの花を咲かせたらいいさ」という歌詞が印象に残った。こういった曲のように、その年を代表してヒットしている曲で、心に残るメッセージのある曲を選定してほしいと思う。(東京・中学2年・男子)
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『SCHOOL OF LOCK』(エフエム秋田/エフエム東京) この番組は受験生になってから聴きはじめました。毎回有名な方がゲストで登場し、講師となって10代の私たちのために授業を行い熱いメッセージを送ってくれるので、聴いているだけで「今は頑張ろう」と思うことができます。この日は成人の日で大人とは何かを考えさせられるコーナーがありました。元気な内容と受験生に向けての応援の言葉が心に響いて、少し泣けてしまいました。この番組を聞くと元気が出ます。10代を応援してくれる番組は少ないのでもっと増えてほしいと思います。(秋田・中学3年・女子)
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『内村カメラ』(日本テレビ) 町中にカメラを設置して、一般の人に本音を言ってもらったりするこの番組は、芸能人ではなく一般人にスポットライトをあてていて面白いと思いました。また、審査員となるゲストが「いいじゃん」ボタンを押して評価していき、最後にそのコーナーで一番面白かった人に3万円の賞金を差し上げていて、見ていてとても面白いです。私は今回初めてこの番組を見ましたが、母と二人で笑い転げていました。しかし、カメラを銭湯に設置し「見えないように踊ってください」というコーナーは不適切なのではないかと感じました。実際、これに挑戦した人は見えないように踊れていなくて、モザイクによって修正されていました。たしかに見ていて、踊っている人が滑稽で面白いのですが、番組としてこれを要求するのは問題だと思います。ちなみに、このコーナーは人気だったそうで復刻したようです。このようなくだらないものを好む風潮があることを興味深いと感じました。(東京・高校1年・女子)
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『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ) 毎年、家族で楽しみにしている番組です。学校でも、ガキ使派か紅白派かで別れるほど年末年始を代表する番組だと思います。ただ、近年はテレビの規制が厳しくなり、この番組も引っかからないだろうかと心配です。というのも、面白さゆえに倫理的にギリギリの企画がほとんどだからです。今年は、冒頭で出演者が黒塗りメークをしたことで、人種差別ではないかとの批判が相次ぎました。私は該当シーンを見ていましたが、そのようには感じませんでした。番組自体がふざけているし、人種差別を思わせるような発言はなかったからです。しかしながら、このニュースを見てから、自分の考えや感じ方の甘さを痛感しました。制作側は、肌の色で笑わせようという意図ではなくモノマネで笑わせようと思ったという趣旨の返答をしています。同じ黒人の方でも「お笑い番組だから、失礼でもなかったし全く気にならなかった。番組は見たけど嫌な気はしなかった。番組全体が馬鹿げたおふざけな感じだったから、人種差別だとは思わなかった」と言っている方もいます。しかし、グローバル化が進み、2020年には東京オリンピックが開催され、より国際化が求められる日本は、もっと視野を世界に広げるべきなのだとこの一件に関しても思いました。日本に住んでいたら、人種差別を意図すると感じられないものでも、国が違えば、それを意図する行為に受け取られるかもしれません。だからと言って、規制をかけ過ぎて番組自体がつまらなくなっては本末転倒というか、面白ければどんな企画でもしていいというわけでもありませんが、規制に縛られ過ぎて番組の質が、どんどん低下するのは視聴者として嫌です。(埼玉・高校1年・女子)
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『夢対決2018 とんねるずのスポーツ王は俺だ!!5時間スペシャル』(テレビ朝日)さまざまなスポーツのプロ選手ととんねるずの2人が対決するという番組。テニスで登場した松岡修三さんとの対決で、とんねるずのタカさんが途中暴言を吐いたり、助っ人を呼び込んで6対2で対決したりするのだが、とんねるずの2人と松岡さんの仲だからこそ成立しているように見えた。ゲーム終了後もしっかりと握手をしていて、スポーツ選手としてとても素晴らしいと思った。(静岡・高校2年・男子)
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『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ) 毎年恒例、男子中高生の7割は見ていそうな番組だと思う。今年は「黒人差別ではないか」と批判されたシーンがあったようだ。かつて『ポケットモンスター』で、あるポケモンが次回予告に登場した際、「黒人差別だ」と訴えられて放送ができなくなったことがあったことを思い出した。(東京・高校2年・男子)
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『年末5時間SP延長戦 アメトーーク!』(テレビ朝日) 年末年始のテレビ番組は、全体的に一年の総集編というイメージがあります。話題になった番組の再放送、人気の芸能人などなど「あぁ、こんな年だった」と感じさせてくれます。 それに、普段部活や学校でテレビを見ないような子も同じ番組を見ていたりと、新学期は会話が弾みました。趣味があうと仲良くなるとよく言われます。そう考えるとテレビって素晴らしいなと思いました。テレビは多くの家庭にあり、たくさんの情報をどんな家庭にも届けてくれます。だから、友達同士やクラスメイトと感想を言い合ったり、同じ思いや出来事が違う場所で生活していても分かり合えてより仲良くできるのだと思いました。(愛知・高校2年・女子)
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『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ) 毎年大晦日楽しみにしている番組です。今年も面白かったです。リアルタイムと録画視聴になっているのは、妹たちが、途中見たいアーティストのときだけ紅白に変えたので、再度録画でも見ました。思わず吹き出してしまう、視聴しているこちらは笑ってみることができ、一年を締めくくるのにとっておきな内容です。今年はタイキック祭りかのようなタイキックの多さ。まさかベッキーまでタイキックをされてしまうとは。この企画を考える方も毎年いろいろなアイテムを用意して、予算はどのくらいなのかと思いました。一夜限りにしては勿体ない。それにしても、おしりは痛そうだ。(長崎・高校2年・男子)
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『anone』(日本テレビ) (脚本家の)坂元さんの描く「家族との愛情」は本当に悲しくて、現実的で、美しいものだと思います。また、私たちが日常で感じる不平等感、欲の醜さ、社会の歪みへの怒りがこの作品に昇華されていると感じました。(東京・高校3年・女子)
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【自由記述】
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- 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』(日本テレビ) 初めてフルで見ることができました。前年までは小学生にはまだ早いと10時以降の内容のものは見せてもらえませんでした。そのときは友達みんな見ているしと思っていたのですが、今回見てみて、たしかに親があまり見てほしくないのだろうなと理解はできました。でも、見ることができてよかったし、爆笑でした。(神奈川・中学1年・男子)
- 大晦日は家族で『紅白歌合戦』(NHK 総合)を見るのを楽しみにしています。今年はオープニングがVTRになっていてアカデミー賞みたいで良かったです。司会の3人も良かったと思います。それでも終わってみると、視聴率が3番目に悪いとネットニュースになっていて悲しくなります。昔と比べると番組の数も増えているし、テレビを見なくても楽しめる場所(遅い時間もやっているカラオケ、ゲーセン、ファミレス等)も増えていると思うので、視聴率だけでいろいろ言うのはおかしいのでは?と思ってしまいます。(鹿児島・中学2年・女子)
- 『あけまして、ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ) 元旦、年が明けてすぐにこの番組を見ました。(家族が皆寝てしまったので)少年院入所者や薬物中毒者の経験を赤裸々に人形が語る番組で、見てはいけないものを見たような、大人の世界を覗き見たようで楽しかったです。なかなか夜通しテレビを見ることがないので、お正月気分+大人の気分を味わえました。(千葉・中学2年・女子)
- お正月は時間があるせいか、TVがつきっぱなしのせいか、うっかり見てしまう。うっかりこたつに座ってしまう。そして面白い。お正月といういつもとは違った空気のせいか、恐るべしお正月。三が日。(長崎・高校2年・男子)
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【青少年へのおすすめ番組】について
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- 『アラスカへの憧憬~亡き父・星野道夫を追って』(NHK BS1) 星野さんの文章は受験の際によく問題文になっていたので気になっていました。とてもとても良かったです。道夫さんの息子に会った現地の人々がみな感動していて、その映像にジーンと感動しました。アラスカの人々が「ミチオミチオ」と口にする響きは大切な魔法の言葉のようで、アラスカの風景が絵本のようであり、出ている人がみな物静かで力強く温かく、ドキュメンタリーなのに、まるでファンタジーを見ているようでした。(千葉・中学2年・女子)
- 『歌唱王~歌唱力日本一決定戦』(日本テレビ) 年齢・職業もさまざまななか「歌」という一つのことで暑い戦いが繰り広げられるのはすごいことだと思いました。歌一つでも歌い方次第で雰囲気や歌い手の思いまで伝わってきて感動しました。歌は人と人をつないでくれるものなのかもしれないと思いました。(埼玉・中学2年・女子)
調査研究について
委員会開催の直前(同日午後1時30分~4時15分)に調査研究に関する意見交換会を行いました。この意見交換会には委員全員と在京の民放キー局5局とNHKの担当者21名が参加しました。担当委員がこの度まとまった「青少年のメディア利用に関する調査」の結果に分析を加えたものを説明し、それに対する放送局側の意見を聞き、疑問に答えました。
この意見交換会は調査研究の一環として位置づけており、今後行われる発表会(3月13日実施予定)での公表内容や報告書に反映することにしています。
今後の予定について
2月24日(土)に千代田放送会館会議室にて学校の先生方との意見交換会を開催します。