放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2017年12月14日

東京メトロポリタンテレビジョン
『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、12月14日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の4人が出席し、当該局の東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)からは、常務取締役(編成局担当)ら4人が出席した。
まず川端委員長が「審議の対象となったのは"持ち込み番組"であるが、TOKYO MXには、放送倫理上の問題がある番組は放送しないという責任がある。委員会は、放送内容には裏付けがないか裏付けが十分でないものがあったという放送倫理上の問題を指摘したうえで、TOKYO MXは考査でその問題点を発見して、制作会社に内容の修正を求めるか、このままでは放送できないと判断すべきだったという結論に至った。TOKYO MXは、委員会の審議中にもかかわらず、2017年2月、放送倫理上の問題も放送法違反もないという自社の見解を発表した。しかし、今回の委員会決定で明らかなとおり、自社が定めた放送基準を自ら裏切るような内容の"持ち込み番組"を放送してしまった点において、TOKYO MXには非常に重大な責任があると考える。意見書で指摘されたポイントを重大に受け止め、具体的な対応策を早急に示していただきたい」と強く要請した。
藤田委員は、「委員会で独自の調査を実施し、事実関係の確認と表現について6つの問題点を指摘したが、この意見書を、TOKYO MXの社内で共有し、議論してほしい。その結果を改めてお伺いしたい」と述べた。
中野委員は、「委員会は、特別な調査をしたわけではない。審議の対象となったあと、TOKYO MXは、なぜ自律的な検証を行わなかったのか。その点が重大な問題だと思っている」と指摘した。
岸本委員は、TOKYO MXが発表した見解について、「視聴者への視点の希薄さを感じた。視聴者の支持なくして放送の未来はありえない。視聴者の視点にたった意識を持ってほしい」と述べた。
これに対してTOKYO MX側は、「委員会の審議が開始されて以降、当社は、社内の考査体制の見直しを含め、改善に着手している。改めて、今回の意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社72人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、今回の審議の過程について詳しく説明した。審議の対象とした番組は、放送局が番組制作に関与していない"持ち込み番組"であったため、放送倫理検証委員会としては、当該局の考査について審議する初のケースとなった。番組を制作した制作会社のスタッフに直接ヒアリングできず、TOKYO MXの報告書と考査関係者へのヒアリングでも当該番組が伝えた内容に裏付けがないか裏付けが不十分だと思われる放送倫理上の疑いが解消されなかった。このため、委員会として沖縄で独自に調査する必要を感じ、担当委員が沖縄に赴き意見書に記載したとおりの調査を実施した。「基地建設反対派は救急車を止めたのか」「基地建設反対派は日当をもらっていたのか」「いきなりデモ発見の場面」で伝えられた抗議活動の参加者が「1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という内容に裏付けとなる事実があったのかなど、放送倫理上の問題があったかどうかをチェックした。その結果、委員会は、TOKYO MXには、適正な考査をしなかったために、放送倫理上の問題があり、そのままでは放送してはならないものを放送してしまったという重大な放送倫理違反があったとの結論に至ったと述べた。そして、川端委員長は、「自らの放送倫理のとらえ方について考え直していただくことを期待している」と、TOKYO MXに早急に対応するよう求めたことを明らかにした。
藤田委員は、「"持ち込み番組"と放送局の接点は考査である。本件放送を考査担当者になったつもりで初めて視聴した際、何かひっかかる場面や立ち止まる場面があるかどうかというポイントを中心に検証した。本件放送を見たときに浮かんだ疑問が解消されなかったので現地調査を行ったが、その結果、裏付けがないか不十分なまま放送されたことが確認できた」と述べた。
中野委員は、「放送に携わる人たちには、放送番組で事実を提示する場合、事実に対する畏れを抱き、このような内容で本当に大丈夫なのだろうかと自問を繰り返し、慎重に扱ってもらいたい。TOKYO MXには、放送倫理上の問題が指摘された中、放送で伝えた内容の裏付けを確認するなど真摯な検討を加えた報告書を提出してもらいたかった。しかし、早々と放送倫理上問題なかったとする見解を出したため、『放送の自律の放棄ではないか』と言った委員もいた」と述べ、当該局の審議入り直後の対応を厳しく批判した。
岸本委員は、「TOKYO MXをはじめ放送局のみなさんには意見書の『おわりに』まで読み込んでほしい。インターネットと比較した放送の情報の質について言及している。視聴者は、放送局の情報は、放送局が事前にチェックしているため不確実、不適切な情報ではないだろうと信頼を寄せている。今回のようにチェック機能が十分に機能しなければ視聴者の信頼への裏切りにつながる。放送人としての矜持をもって考査に当たってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 独自調査は、どのような議論をして誰が行ったのか。また、委員会による調査の前例はあるか。
A: 1回目は委員1人と事務局、2回目は委員2人と事務局で沖縄に赴いた。このほか、人権団体から話を聞いた。調査したのは、放送内容に裏付けとなる事実があるのか、裏付けとして示されている事実が裏付けとして十分なのかどうかという確認であり、"ある事実"が本当に存在したのかどうかという調査ではない。また、放送倫理検証委員会の独自の調査としては4例目である。(川端委員長)
   
Q: "持ち込み番組"であり意見書は放送内容に踏み込んでいない。委員会の調査の限界と思うか。"持ち込み番組"の対応について委員会として働きかけるつもりはないのか。
A: 委員会はNHKと日本民間放送連盟(民放連)加盟局の放送倫理上の問題を「審理」「審議」するのが職責である。今後、本件放送のような完パケ"持ち込み番組"が増加するのならば、意見書を受けて民放連で検討されると思う。(川端委員長)
   
Q: 『ニュース女子』は、他の放送局でも放送している。本件放送を考査して放送を取りやめた局はあったのか。
A: 『ニュース女子』は、レギュラー編成していない放送局を含めて、TOKYO MX以外に27局で放送実績(2017年5月30日現在)がある。しかし、本件放送を放送した局はなかった。いくつかの放送局は本件放送について独自の考査をして放送しなかったと聞いているが審議対象ではないので調査していない。(川端委員長)
   
Q: 過去の審議事案で、"重大な放送倫理違反"とされたケースを教えてほしい。
A: フジテレビ『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見(委員会決定20号)、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見(委員会決定23号)に続き、今回が3例目である。(川端委員長)

以上