放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2017年10月5日

TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』
「多摩川リバーサイドヒルズ族エピソード7」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、10月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、鈴木嘉一委員の4人が出席し、当該局のTBSテレビからは取締役(情報制作局担当)ら3人が出席した。
まず川端委員長が「ホームレスの男性を『犬男爵』と呼び、極端に誇張したイラストとともに『人間の皮を被った化け物』と決めつけたこと、カメラに向かって怒鳴る出会いのシーンを3回も使い、男性の人格について『すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物』という印象を与えたこと、『人間の皮を被った化け物』という別のホームレスの男性の発言を本人に断りなく撮影し、了解もないまま放送したことは、明らかな放送倫理違反と認められる」と指摘した。一方で、「TBSテレビは的確な訂正と謝罪を行うとともに、ホームレス支援を行っているNPOの人を招いて研修会をすぐに開催した」と事後の対応について評価した。その上で、「現場の記者や番組制作者らの間に生まれつつある『問題をもう一度考え直す』という空気をぜひ育て、より良い番組を作ってほしい」と今後への期待を表明した。
鈴木委員は「ネーミングなどでホームレスの人たちを茶化していると最初から疑問を呈する番組制作スタッフがいたことや、放送直後から局内で表現などについて疑問や批判の声が上がったことなど、健全さもみられる。事後の対応も適切で真摯な自律的姿勢もみられるのに、なぜ問題が起きたのかを考えてほしい」と指摘した。
斎藤委員は「ホームレス問題は貧困や障害など複雑な要素を持っている場合が多い。報道番組以外で扱うときは報道よりはるかに深く取材し、注意深く放送すべきだ」と訴えた。
渋谷委員は「自分の視点だけではなく、取材される側、視聴者がどう思うかを、プロとしてさまざまな角度から表現を考えて放送してほしい」と述べた。
これに対し、TBSテレビ側は「取材や番組づくりの過程で何度も違和感がありながら止められなかった。いくつものレベルでチェックしたが、たくさんの人がチェックしているにもかかわらず結果として無責任になってしまった。報道、情報、制作を含め、全社でスタッフの意識と各レベルでのチェック体制を向上させていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社37人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、明らかな放送倫理違反と認められるという結論に至った理由を説明した上で、こうした番組作りの背景には、社会的弱者、特にホームレス問題に対するスタッフの無理解と偏見があったと指摘した。
鈴木委員は「非常に複雑な社会的背景があるホームレス問題に対する認識の希薄さ、バラエティー的な表現を許容し放置するという『集団的無意識』の延長線上に、今回問題となった『エピソード7』がある。この『集団的無意識』をどうやって乗り越えればよいか、現場の一人ひとりが考えてほしい」と要望した。
斎藤委員は「ホームレス問題の背景には、貧困だけでなくさまざまな問題がある。報道以外のジャンルの番組でこうした問題を扱う場合は、報道以上に詰めた取材をして、深く考え、慎重な表現をしなければならない」と指摘した。
渋谷委員は「行政当局に代わって自分たちが懲らしめている、問題を解決していると考えるのは放送としていかがなものか。取材する側とされる側は立場が違う。取材される側がどう思うか、自分が作る映像がどう受け取られるかというところまで考えて番組を作ってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:ホームレス男性との河川敷での「出会いのシーン」が、「過剰な演出とまで言い切れるかどうかは微妙」と判断した背景を説明してほしい。
    A:ディレクターの実際の指示は「『なんでこんなところに入ってくるのか』と言いながら出てきてください」というだけの指示だった。ところが実際は、撮影していたカメラマンも驚くほど怒鳴りながら出てくる映像になっている。これは頼まれたホームレス男性が、「こうやらなければならない」と思い込んで行ったことで、ディレクターがそのような演出をしたわけではないのでこのように判断した。(川端委員長)

  • Q:「人間の皮を被った化け物」ということばは、取材ディレクターがホームレス男性に言わせたのではないかという疑念を感じるが、確認は行ったのか?
    A:もちろん確認した。言わせたとか誘導したということは全くなく、突然このような表現が出てきた。(川端委員長)

以上