放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第113回

第113回–2017年3月

沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』を審議など

委員会が昨年12月に出したTBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見について、当該局から提出された対応報告書を了承して公表することとした。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りした東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、TOKYO MXに対するヒアリングの結果が担当委員から報告され、意見交換を行った。その結果、この番組が"持ち込み番組"であるため、実際に番組を制作したスタッフからも話を聞いてさらに検証する必要があるとして、制作会社に協力を求めていくことになった。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、この問題を受け当該局が作成した「番組制作の指針」に関する追加報告書をもとに意見交換をした結果、さらなる確認や検討が必要だとして、再度討議を継続することを決めた。
NHK総合テレビの『ガッテン!』「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」で、糖尿病治療や予防に睡眠薬が直接有効であるかのような表現があり、また睡眠の長さの重要性を示す実験を睡眠の深さを示すデルタパワーに関連させる不適切な表現があったとしてお詫びした事案について、委員会は当該局からの報告書をもとに意見交換をした結果、これまでの放送で不適切な事例がなかったのかなどを確認したいとして、次回の委員会で討議を継続することになった。
TBSテレビは、情報番組『白熱ライブ ビビット』の多摩川の河川敷で生活している男性の放送に関して、不適切な表現や取材手法があったと謝罪した。委員会は、当該局の報告をもとに討議した結果、このシリーズのこれまでの6回の放送についても視聴する必要があるとして、次回の委員会で討議を継続することになった。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについて、第1部、第2部のテーマや構成の詳細が報告された。

1. TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見への対応報告書を了承

昨年12月6日に委員会が通知公表した、TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見(委員会決定第24号)への対応報告書が、3月上旬、当該局から委員会に提出された。
報告書では、意見書の社内周知と再発防止のため検証委員会の担当委員を招いた勉強会を開催したことや、問題発覚後に策定してすでに実施している再発防止策について、今後ともその効果を不断に点検し改善を図っていくことなどが記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員からの報告などをもとに意見交換を行い、この対応報告書を了承して公表することとした。

2. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題して沖縄での基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集したが、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。なお、この番組は、TOKYO MXは制作に関与せずに、CS放送などに番組を供給している会社が制作したものを、"持ち込み番組"として放送枠を提供する形態をとっている。
2月の委員会で、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実についての裏付けは必要で、それが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、審議入りすることを決めた。3月初旬には、担当委員によるTOKYO MXの編成や考査、営業の担当者5人に対するヒアリングが実施された。委員会では、当該番組が"持ち込み番組"として編成された経緯や、当該番組の考査判断の基準は適切だったかなどのポイントを中心にヒアリングの概要が報告され、意見交換が行われた。
その結果、実際に番組を制作したスタッフにも話を聞いて、さらに検証をする必要があるとして、制作会社に対してもヒアリングへの協力を求めていくことになった。

3. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果があるという内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の岩手放送の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、岩手放送は、番組審議会での説明は誤解にもとづくもので、この番組はタイアップで制作されたものではない、と訂正していた。
当該局からは、この問題を受け作成した「番組制作の指針」に関する追加報告書が提出された。報告書によると、指針の目的は、制作過程の適正化と視聴者に疑念、不信感を抱かれないことであり、外部プロダクションへの制作委託番組および社内制作番組での制作上の留意点、番組と広告の識別のための留意点などが記されている。
委員会の議論では、「週刊誌の取材がなければ、番組審議会での局幹部の発言をそのままにするつもりだったことは、番組審議会軽視であり、安易で無責任だ」「釈然としないところはあるが、当該局も重大な危機感を持って対応しているのではないか」などの意見が出た。一方、この問題に対する民放連の対応も見守る必要があるとして、次回の委員会でさらに討議を継続することになった。

4. 糖尿病治療に睡眠薬を直接使えるかのような表現があったとお詫びしたNHK総合テレビ『ガッテン!』を討議

NHK総合テレビの生活情報番組『ガッテン!』(2月22日放送)で「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題して、"睡眠を改善することで血糖値が下がる"という最新研究を紹介し、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」と伝えた。また、紹介した新しい種類の睡眠薬の説明に「副作用の心配がなくなっている」という表現があった。また、睡眠の長さが血糖値の改善に関係があるという実験について、睡眠の深さを示すデルタパワーも関連しているような不適切な表現もあった。これに対し、放送後、視聴者、医療関係者などから「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」「認められていない適応外処方の推奨に他ならない」「睡眠不足の解消によりデルタパワーが増加するというのは番組が引用する論文の内容と全く異なっている」などの批判が寄せられた。NHKは番組ホームページと3月1日の放送で、睡眠薬の説明が不十分だったり行き過ぎた表現があったりしたため、誤解を与え混乱を招いたことをお詫びした。
当該局から提出された報告書によると、問題の原因として、「医学分野にある程度の専門知識があるメンバーだけで番組の制作が進められたため、睡眠薬のリスクを十分にチェックする姿勢が欠けていたこと」や「謎かけやキーワードが視聴者に届きやすいことを重視するあまり、無理な構成になったこと」などを挙げている。
委員会の議論では、「睡眠薬は、向精神薬であり、健康食品やサプリメントとは違って、扱いは特に慎重でなければならない」「睡眠障害の薬として承認されている薬だからそれ以外の目的では処方できないのに、睡眠障害の診断を受けていない人にも血糖値改善の目的で投与されうるかのような表現は問題」「一人の医師の研究に寄りすぎていたのでないか。いろいろな説を相対化したうえで番組を作るべきである」「番組をキャッチーにするため無理をしているのではないか。相当長く続いてきた番組でテーマに苦労している印象がある」「番組の作りが雑な印象がある。出演した医師が睡眠薬を手に持って見せる映像にも違和感をもった」などの意見が出た。一方「今回の件に対するNHKの対応は真摯であり、お詫びの放送も適切であった」という意見も出され、これまでの同番組の放送で不適切な事例がなかったのか確認したいとして追加の報告を求め、次回の委員会で討議を継続することになった。

5. 不適切な表現や取材手法があったと謝罪したTBSテレビ『白熱ライブ ビビット』を討議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。番組が中心に扱った男性について「犬男爵」と呼んだうえ、撮影OKの確約なしに取材した別の男性の発言を首から下の映像と共に引用して「人間の皮を被った化け物」と化け物を連想させるどぎついイラストと合わせて表現したこと、また男性に「お前ら、ここで何やっているんだ」と言いながら歩いてきてほしいと依頼し、男性を「粗暴な人」と印象付ける結果になった点を謝罪している。
当該局から委員会宛てに提出された報告書によると、放送後、「表現やイラストがホームレスの人権を侵害し、差別を助長する」という指摘や、「悪意ある放送はホームレスの人を危険にさらすので、やめてほしい」といった訴えがあったという。
委員会の議論では、「ホームレスの人たちを揶揄しているとしか思えず、取材対象に対する愛のかけらもない放送だ」「違法なことをしている人たちは笑いの対象にしていい、無断撮影して放送してもいいと思っているのではないか」「河川敷で暮らす人たちなりの生きにくさを伝えなくてはいけないのに、あまりにも取材対象者をバカにしすぎている」などの厳しい意見が相次いだ。しかし「報告書を見ると当該局は問題点がどこにあるかを的確に理解しているのでは」という意見もあり、同じテーマの過去6回の放送などについて追加報告を求めたうえで、次回の委員会で討議を継続することになった。

6. 委員会発足10周年の記念シンポジウムについて

3月22日(水)に開催される記念シンポジウムについて、担当委員から第1部、第2部のテーマ設定や構成案の詳細など、最終的な内容についての報告が行われた。

以上