放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第112回

第112回–2017年2月

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』審議入り
乳酸菌の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』の討議など

2月7日に通知と公表の記者会見を行った、2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見に関して、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』で、乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング」が行われたのではないか、という疑惑が報じられた事案の討議を継続した。委員会は、当該局から提出の追加報告書をもとに意見交換をした結果、さらなる確認や検討が必要だとして、再度討議を継続することを決めた。
東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』で、「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動についての特集が現地リポートとスタジオトークで放送されたが、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。委員会は、当該局から提出された報告書をもとに討議した結果、持ち込み番組であるので、まず当該局の考査が報じられた事実についての裏付けの有無に留意して行われたのか、そもそも制作時に事実の裏付けを十分に行ったのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
委員会の10周年にちなんだ記念のシンポジウムについて、担当委員から「放送の自由と自律、そしてBPOの役割」を正式タイトルとすることが提案され、承認された。

議事の詳細

日時
2017年2月10日(金)午後5時00分~7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見を通知・公表

2016年の参議院議員選挙と東京都知事選挙について、視聴者からさまざまな意見が寄せられたことから、選挙報道全般のあり方についての継続的な審議を経てまとめられた、2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見(委員会決定第25号)の通知と公表の記者会見が、2月7日に実施された。
委員会では、当日のテレビニュースをいくつか視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. 番組内での乳酸菌(ヨーグルト)の「ステルスマーケティング疑惑」が報じられたIBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅』を討議

IBC岩手放送の『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』(2015年9月21日放送)で、ある乳酸菌を摂取していると免疫力を高める効果がある、という内容の放送をしたが、これが「広告」であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」ではないかと報じられた事案の討議を継続した。
この番組については、2015年11月の岩手放送の番組審議会で議論され、出席した局の幹部から「乳酸菌の扱いについては有料のタイアップである」という説明があったが、2016年12月、岩手放送は、この番組がタイアップで制作されたものでないと訂正していた。
当該局からは、この問題について議論された1月の番組審議会に関する追加報告書が提出された。
それによると、「調査の結果、乳酸菌の商品を製造販売する企業から金銭は支払われていなかった。番組審議会に不十分な準備のまま臨み、誤った発言をしてしまった」という局からの説明に対し、委員からは「なぜここまで番組審議会での局幹部の発言を精査する機会がなかったのか」「その場で答えて終わりであれば、番組審議会への局の対応が形骸化していると言わざるを得ない」「自社制作の番組にも指針が必要だ」という意見が出された。
委員会の議論では、「番組審議会でなぜ局の幹部が誤った発言をしたのか、釈然としない感じは残る」「番組作りの不自然さについての疑念は晴れない」などの厳しい意見が出た。一方「当該局が作成に着手している『番組制作の指針』についても見届けたい」との意見も出され、当該局の今後の対応や民放連の動きも見守る必要があるとして、次回の委員会でさらに討議を継続することになった。

3. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について討議(審議入り)

TOKYO MXの『ニュース女子』は、1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、高江ヘリパッド建設反対などの沖縄での米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「過激派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。これに対し、放送直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」などの多数の意見がBPOに寄せられた。なお、この番組は、TOKYO MXは制作に関与せずに、CS放送などに番組を供給している会社が制作したものを、“持ち込み番組”として放送枠を提供する形態をとっている。
委員会は、放送までの経緯について当該局に報告を求めて討議し、「持ち込み番組でも放送した責任は放送局にある」「番組内で取り上げられている事実についての裏付けがきちんとなされていないのではないか」「放送局の放送前の考査の段階で、報じられた事実についての裏付けの有無に留意するなど番組内容についてのチェックがきちんとなされていたのか」などの意見が出された。最終的に、情報バラエティー番組であっても前提となるべき情報や事実については合理的な裏付けが必要であり、裏付けが十分であったのか、持ち込み番組についての放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

4. 委員会発足10周年記念シンポジウムについて

10周年記念のシンポジウムについて、担当委員から「放送の自由と自律、そしてBPOの役割」を正式タイトルにとすることや、各コーナーのタイトルが提案され、承認された。

以上