放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2016年12月6日

TBSテレビ『珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』「双子見極めダービー」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、12月6日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、岸本葉子委員、鈴木嘉一委員、中野剛委員の4人が出席し、当該局のTBSテレビからは取締役(制作担当)ら3人が出席した。
まず川端委員長が「視聴して大変面白い番組だと思っただけに、今回の件は委員会としても非常に残念であった。その原因は、顔相鑑定の専門家として出演してもらったにもかかわらず、最終的には一つの素材のようにしか扱わなかったために、出演者に対する配慮や敬意が欠ける編集をしてしまったことである。その背景には、TBSテレビの局制作の番組でありながら、2つの制作会社が関与するなど非常に複雑で、責任があいまいになりそうな制作体制の中、制作過程全体のつながりがきちんと見られていないことに問題があったのではないか」と述べた。その上で「現在、このような制作体制は非常に広くとられているが、放送局側がどのように制作会社との関係を適切に構築していくのかが、これからの課題であることを十分留意してほしい」と指摘した。
また、中野委員は、「今回の件は、放送前に問題点に気づけるチャンスが何回かあった。その時に、スタッフが自分の意見をしっかり言えばストップがかかったのではないか。スタッフが自分の意見を率直に言えるような環境作りに、放送局側もしっかり取り組んでほしい」と述べた。また、岸本委員は、「とくに若い制作者には、意見書の結論部分だけでなく、それに至る過程についても是非読んでもらい、私たちの問題意識を共有して、番組制作にあたってほしい」と述べた。さらに、鈴木委員は、「委員会では、これまでも、番組で失敗したら、番組で取り返せというメッセージを送ってきた。今後、番組をよくする形で失点を取り戻してほしい」と述べた。
これに対してTBSテレビ側は「委員会の考えを、全社で、特に制作現場の皆に共有させ、ご意見を実のあるものにしていきたい。制作会社の力を借りて番組を制作する形態が多くなったが、局としてのガバナンスが効いていなかった。この制作形態を前提に、TBSとしてどうような体制が組めるのかが、今後の課題だと認識している」と述べた。

このあと、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には20社37人が出席した。
初めに、川端委員長が意見書の概要を紹介し、「委員会は、出演者に無断でレースから脱落したことにしてその姿を消すという、出演者に対する敬意や配慮を著しく欠いた編集を行ったことを放送倫理違反と判断した」と説明した。さらに「番組制作を担当した人たち相互の間でも、重要なことの伝達がなされていなかった。制作現場内の風通しの悪さが問題の背景にあったのではないか」と述べた。その上で「局制作をうたいながら、実際は制作会社が作っているという番組は現在たくさんあるが、局がしっかりその制作過程を管理できる体制を作っていかなければ、これからも同じような問題が起こるのではないか」と指摘した。
中野委員は「疑問を持つスタッフが複数いたにもかかわらず、最後の出演者の姿を消す段階まで、結局声を上げられなかったことが、担当者へのヒアリングで浮かび上がってきた。その道のプロとして番組を放送する以上は、率直に自分の意見を発言し、議論した上できちんと対応策を考えてほしかった」と述べた。岸本委員は「バラエティー番組ということで、長時間の慎重な議論を重ね、この意見書をまとめた。現場の制作者には、この意見書を隅々まで読んで、私たちの問題意識を共有していただきたい」と述べた。また、鈴木委員は、「言うまでもなく、出演者は一個の人格であり、それぞれ社会的な立場を持っている。出演者を単なる素材と見てしまうとそういう人間的な要素が抜け落ちてしまう。今回は、スタッフが出演者を素材視していたところに一番の問題があったのではないか。スタッフの意識が問われたケースだと思う」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:事実関係の確認だが、TBS側のスタッフは、編集作業で時系列を入れ替えたことや、出演者の姿が消されたことを、問題が発覚するまで知らなかったということなのか?
    A:その通りです。(川端委員長)

  • Q:この番組のスタッフには、以前審議対象となった「ほこ×たて」のスタッフもいたと思うが、意見書で同じ制作スタッフがいたことに言及していないのはなぜか?
    A:同じスタッフがこの事案にも関与していることは当初からわかっていたので、そのことが今回の過ちが起こったことに関連しているかは注意してヒアリングをした。しかし、そういうことではないことがわかったので、制作会社と放送局との関係一般の問題にとどめて言及している。(川端委員長)

  • Q:個人の問題ではなくて、構造の問題ということか?
    A:そうです。(川端委員長)

  • Q:「ほこ×たて」と総合演出が同一人物で、スタッフたちが意見を言いにくい環境があったということだとすると、「ほこ×たて」の事案と共通項があることになるのではないのか?
    A:「ほこ☓たて」の事案の際に、総合演出に意見が言いにくいということが問題になっていたなら関係があることになるが、「ほこ×たて」の時はそうではなかったと理解している。あの事案では、ディレクターが単独で「ない対決を作り上げてしまった」ことなので、問題は違うと思う。(川端委員長)

以上