2016年11月に視聴者から寄せられた意見
東京・神宮外苑前のイベントで痛ましい火災事故があったが、その報道姿勢や使用した映像に関する批判が多く寄せられた。また、アメリカ大統領選挙に関連した情報系番組における報道のあり方への意見、覚せい剤使用の容疑で逮捕された歌手への取材方法や映像使用に関する批判など。
2016年11月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,557件で、先月と比較して284件減少した。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、FAX1%、手紙ほか1%。
男女別は男性65%、女性34%、不明1%で、世代別では40歳代30%、30歳代29%、50歳代18%、20歳代14%、60歳以上7%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。11月の通知数は796件【45局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。
意見概要
番組全般にわたる意見
東京・神宮外苑前のイベントで痛ましい火災事故があったが、その報道姿勢や使用した映像に関する批判が多く寄せられた。また、アメリカ大統領選挙に関連した情報系番組における報道のあり方への意見、覚せい剤使用の容疑で逮捕された歌手への取材方法や映像使用に関する批判も多く寄せられた。
ラジオに関する意見は37件、CMについては18件あった。
青少年に関する意見
11月中に青少年委員会に寄せられた意見は119件で、前月から62件減少した。
今月は「いじめ・虐待」が36件と最も多く、次に「表現・演出」が27件、「言葉」「性的表現」がそれぞれ8件と続いた。
「いじめ・虐待」では、バラエティー番組のトークシーンで、タレントが「学生時代に矛盾した言動が目立つ友人を問い詰めた結果、その友人が学校に来られなくなった」旨のエピソードを話したことについて、多くの意見が寄せられた。
「表現・演出」では、アイドルチームとお笑いタレントチームが体を使ったゲームで対決し、負けたチームが勝ったチームに土下座したことについての意見が複数あった。
「性的表現」では、深夜のアニメ番組で男児キャラクターの性器が描かれていたことについての意見が目立った。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
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アメリカ大統領選報道において、各局が情報を出すタイミングを操作していたのではないかと疑念を抱いた。現地ニュースのWebサイトやリポーターが、トランプ氏勝利確定と言っている州をなかなか選挙人獲得としてカウントしなかった。一方、クリントン氏が選挙人を獲得する際は即時表示させ、あたかも僅差状態が昼過ぎまで続いているように報道していた。トランプ陣営の盛り上がりは終始伝えていたが、沈んでいるはずのクリントン陣営はほとんど映さなかった。こういった姿勢が、報道に一喜一憂する視聴者の感情を利用し、テレビに繋ぎとめるための方策としてあるのであれば許し難いことだ。
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神宮外苑前の火災事故の報道で、火災現場から発見された5歳児にモザイクを入れて放送していた。ツイッター上にアップロードされた動画を引用したようだ。救助を求める父親と思われる男性の悲痛な叫びも収められていた。事件事故を伝える目的のために、凄惨なシーンや遺族が動転して悲鳴を上げている姿を全国に放送する必要はあるのか。親御さんの心情を思うと見るに堪えられない。
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神宮外苑前の火災事故の報道で使用している映像素材は、救助に全く手を貸さず、現場状況を最後まで平気でカメラに収め、SNSに投稿したものと思われる。このような倫理に外れたものを使用する番組制作者や現場ディレクターの判断、テレビ局としての姿勢に憤りを覚える。
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神宮外苑前の火災事故で投稿映像を流しているが、必要ないと思う。私は消防団に入っているが、火災現場に行くと野次馬の中に携帯電話で撮影している人がいる。消火活動の邪魔にもなる。テレビでこのような映像が使われると、一般市民が自分たちの事故現場の撮影に公共性があると勘違いしてしまう。
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高齢者による交通事故を取り上げて、「高齢者の運転=いけないこと」と批判している。徒歩圏内に店の無い地方の高齢者には、運転しなければ生活できない事情もある。やみくもに「運転するな」と批判されてもどうにもならない。高齢者が運転せざるを得ない背景も併せて伝えるべきだ。
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インターネットの意見を、あたかも多数派の意見のように取り上げるテレビ番組が非常に多い。あるいはその意見を"視聴者の意見"として制作に反映している。これでは誤った情報を伝えている可能性もある。テレビの影響力を考えてほしい。番組によっては「インターネットの意見は無視してよい」という発言もある。限度はあるが大体そのとおりであると思う。テレビ制作者側のインターネットに対する知識が足りな過ぎではないだろうか。
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覚せい剤使用の容疑で逮捕された歌手のタクシー内映像が放送された。単に逮捕の直前の映像というだけで、事件の現場でもなく、動機やアリバイを示す決定的映像でもない。タクシー会社は、警察からの依頼の場合を除いて、乗客の同意なく防犯カメラの一般公開を前提とした映像を提供しないはずである。例え、タクシー会社から提供を受けたとしても、この映像を流すのは、プライバシーの面から重大な問題があると思う。こうした行為が許容されるなら、乗客は車内カメラのスイッチを切れと要求したり、事件捜査以外に映像を利用しないよう確認しないと安心してタクシーを利用できなくなる。
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歴史ある音楽賞の買収疑惑を週刊誌が伝えている。しかしどの局も、この話題を一切取り上げない。不倫問題等、弱っている人間に対して連日容赦ない攻撃をしておきながら、大きな力には屈するようで憤りを覚える。各局で伝えるべきだ。
【番組全般・その他】
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日本各地の家族を訪ね歩く番組は、人と人との出会いによる感動があり、素晴らしい。このような心温まる番組が増えることを願っている。放送を見て、実際に出演者が訪れたロケ地に観光に行く人も多いそうだ。地方の活性化・観光PRにも大いに役立つ。
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この人気芸人は、どの番組でもセクハラと思われる行動をするが、不思議と大きな問題にならない。一般の会社ならクビになるようなことでも何故か許されている。相方と女子アナウンサーと三人で都内近郊を散歩する番組は、度重なるセクハラをテレビに映し、女性を笑いものにしているようで気分が悪くなる。
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夜のニュース番組で、「トランプ氏が大統領になると、米国から車の輸入を押し付けられる、基地負担を求められる」と不利益ばかりを強調し、「ニューヨークでは反対意見が多い」と結論付けた。トランプ氏はクーデターで政権を取ったわけではない。選挙という民主的な手段で選出されたのだ。反対意見ばかりだと言うなら、取材した場所と人が偏っているのだろう。トランプ氏を支持した人達の意見と、彼らがトランプ氏に何を期待しているのかを聞きたいが、肯定する意見を取り上げることは一切なかった。報道は中立・公平なものでなければならず、多面的な視野に立っての見解が求められる。無用な不安を煽るのは報道番組としてすることではない。
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夜のニュース番組で、ゆるキャラについて放送していた。誕生した経緯やその活躍を取り上げるならまだ分かる。しかし、流れてきたのは、中に入っている人がかつて鬱病で苦しんでいたことや、重い難病を患っていたということだった。ゆるキャラは、人に夢を与えるものだ。その下の素顔まで知ると楽しめなくなる。困難を乗り越えた人を取材したいなら、他にやり方があるだろう。視聴者にとって触れてほしくないところをあえて見せる。この番組を見ると、制作側が素人集団のような気がしてならない。
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昼のニュース担当の女性アナウンサーは、かなりの回数で噛んだり読み間違いをする。今日も、アメリカ大統領関連のニュースで何度もつかえ、同じ所を繰り返し読み直していた。平日5日間のうち2~3日くらいは噛みまくり、非常に聞きづらい。人間だから全く噛むなとは言わないが、毎日毎日噛まれては、ニュースが頭に入って来やしない。
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年末恒例の歌番組は、人気アイドルグループのメンバーそれぞれが掲げた「夢」に1ヵ月間投票を募り、その「夢」の順位を生放送で発表するとのこと。人の夢を他人の投票で順位をつけること自体がおかしな話だか、メンバーの気持ちを思うとかわいそうになる。記者会見のときに初めて企画を知らされ「残酷すぎませんか?大晦日まで争わないといけないなんて」とコメントしていたが、まさにそのとおりだと思う。メンバーは12~25歳の女の子で構成され、未成年も多い。このような企画には到底賛成できない。
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終電を逃した人の家に付いて行くだけの番組は、街で飲んでいる人の意外な人生が分かり、人は見かけによらないと感心させられる。市井の人々が懸命に生きていることが垣間見られ、切なくもいい番組だ。田舎の移動販売車で買い物をしているお年寄りに付いて行って、話を聞くことも実に面白い。以前、おじいさんが亡くなって、お葬式でそのビデオを流して喜ばれたというエピソードの回は本当に良かった。この局は、外国人など一般の人々をよく取材して面白い番組を作っている。下手なタレントや芸人を使うより何倍も良い。
【ラジオ】
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通信販売コーナーで宣伝しているお掃除ロボットを購入した。最新型と強調していたが、届いたのはいわゆる型落ち品だった。私は量販店で下見をしていたのでそのことに気づき、クーリングオフで返品できた。しかし購入者の中には、放送で言っているとおり、最新型と信じて使っている人も多いと思う。ラジオ局に最新型という売り文句を外すよう申し入れたが改善されず、つい先日も「最新型を紹介します」と言って型落ち品を宣伝していた。番組パーソナリティーやゲストも商品説明に加わっているので信用度も格段にアップしており、余計に腹立たしい。
【CM】
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賃貸住宅のCMで、着ぐるみのキャラクターが、公道をキックボードに乗ってバスを追いかけるシーンがある。キックボードは遊具であり、交通量の多い公道での使用は禁止されている。CMを見て真似をする人も現れるのではないか。
青少年に関する意見
【「いじめ・虐待」に関する意見】
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バラエティー番組のトークシーンで、タレントが「学生時代に矛盾した言動が目立つ友人を問い詰めた結果、その友人が学校に来られなくなった」旨のエピソードを話していたが、テレビで笑い話として話すような内容ではない。後悔しているような感じもなく、大変不快だった。
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トーク番組で、あるお笑いタレントの変わった性格を別の多数のお笑いタレントが揶揄していた。本人が嫌がっているにも関わらずトークは続けられ、小学生のいじめを彷彿させるような内容だった。子どもたちへの悪影響が心配だ。
【「表現・演出」に関する意見】
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タレントに簡単なテストを受けさせて、誰が一番勉強できないかを決める企画があった。タレントの出身校が表示されていたが、その学校の中にはいじめにより不登校になった生徒を受け入れているような学校も多く見られた。辛さを乗り越えてやっと学校に通っている生徒がたくさんいるにも関わらず、一部のタレントの成績だけで勉強ができないと思われてしまうのはかわいそうだ。このような企画で高校名を出す必要があったのだろうか。
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アイドルチームとお笑いタレントチームが体を使ったゲームで対決する番組で、負けたチームが勝ったチームに土下座していた。勝負事で負けた方が土下座するという概念を子どもたちに植え付けないでほしい。
【「性的表現」に関する意見】
- 深夜のアニメ番組で、小学校高学年くらいの男児キャラクターの性器を何度も描いていた。乳児や幼児ならともかく、社会通念から外れているのではないか。
【「危険行為」に関する意見】
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視聴者からの投稿動画を紹介する番組で、息子が父親にいたずらするシーンを取り上げていたが、危険な行為が多かった。特に、寝ている父親の口を掃除機で吸って起こす行為やドライヤーに小麦粉を入れておく行為は重大な事故に繋がりかねない。子どもが真似しないか心配だ。
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あるタレントが重さ9kgのボールを使って腹筋を鍛えている旨を紹介した際に、そのトレーニング方法を他の出演者にも挑戦させていた。普段鍛えているタレントならともかく、重たいボールを腹に落とす行為はとても危険だ。子どもに人気があるグループのメンバーが挑戦しており、学校などで真似する子どもが出ないか危惧する。