第104回–2016年5月
熊本地震の取材・報道について意見交換
議事の詳細
- 日時
- 2016年5月13日(金)午後6時~8時20分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1. 熊本地震の取材・報道について
- 出席者
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川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員
1.熊本地震の取材・報道について
第104回放送倫理検証委員会は5月13日に開催された。
討議の対象となる事案がなかったため、200件を超える視聴者からの意見がBPOに寄せられた熊本地震(4月14日発生)の取材・報道について、意見交換が行われた。
視聴者意見には、
▽ ヘリコプター取材の騒音などが被災者の救助の妨げになっている。
▽ 避難所に駐車している報道関係者の車両のために避難者が駐車できなかったり、夜間の中継や照明のために睡眠を妨害されたりしている。
▽ 行方不明者の搬出作業をテレビカメラが撮影するため、捜索隊はシートで目隠しをしなければならず、作業の遅れにつながる。
など、震災報道に関する具体的な批判が多かった。
また、取材者としてのモラルを問う意見として、
▽ テレビ中継車がガソリンスタンドで給油待ちをしている車の列に割り込んだ。
▽ 食料が不足する中、アナウンサーが弁当の写真をツイッターへ上げていた。
などの批判も寄せられた。
委員会では、個々のニュースや番組について、放送倫理上問題ありと指摘する意見はなかったが、取材や報道の在り方をめぐっては、さまざまな視点や論点から、議論が交わされた。
[委員の主な意見]
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ヘリコプター取材に関する批判が多く寄せられているが、震災の初期などには報道のヘリで災害の場所が特定でき、被害の大きさが分かる場合もある。ヘリ取材をすべて否定してしまうと、被災地の状況が把握できなくなってしまうという一面もあるのではないか。
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打ち続く自然災害に対して、受け手の視聴者の方も相当に過敏になっている部分があるのではないか。そうした視聴者の不安も踏まえ、報道の内容や取材の仕組みを放送局が自ら精査していくことがとても大切だと思う。
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視聴者の知りたい情報、例えば九州・四国の原発の場所を地図上に加えて、異常がなければ異常なしと明記するなどの対応をしてもらえば、視聴者の不安解消につながるのではないか。
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視聴者意見やネットでの反応を見ると、被災地の当事者ではない人々がテレビの報道を見てそれをバッシングするという傾向もうかがわれる。周囲には厳しい目があることを自覚しながら、放送局として、必要な取材を適切な態勢でやっていることを視聴者にきちんと伝えることも重要だと思う。
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バッシングにセンシティヴになりすぎるのも問題ではないか。取材者には、嫌われるのを覚悟で伝えるべきことは伝えるという姿勢がほしい。ニュースで、現地からの中継中に、被災者らしき人からクレームをつけられ中継をやめたケースがあったが、あわてて中継をやめるのではなく、逆にその人に話を聞いてほしかった。びくびくしている感じが残念だった。また、ボランティアが焼き芋を配っているのを中継したニュースでは、リポーターが雨に濡れながら待つ少女2人を押しのけてボランティアにインタビューしたという批判があったが、そうは見えなかったし、少女の話まで聞いていれば、そうした意見にはならなかったのではないか。
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東日本大震災や中越地震の際にも、取材しやすい場所にメディアが殺到し支援物資もそこに集中するという問題があった。それぞれの局が判断すべきことだが、過剰に詰めかけるところがある一方で、まったく行かない場所もあるということにならないでほしい。
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災害報道は、視聴者の放送に対する日ごろの不満が凝縮して出るという面もあるので、放送局は、一定の時間がたって自己検証する時に、こういう基準で震災を取材し報道したということが視聴者にきちんと伝わる総括的な検証番組を制作することも必要ではないか。
以上